今回は、「ルーマニアンデッドリフト」について書いていきます。
”ルーマニアンデッドリフト”というと、
「ハムストリングス・殿部を鍛える!」
といったイメージで、トレーニングされている方が多いと思います。
非常に優秀なトレーニングですが、少しのフォームの乱れで「怪我」につながりやすいトレーニングでもあります。
そのなかで最も多いトラブルが「腰が痛い」という悩みです。
”ルーマニアンデッドリフト”で「腰が痛い」理由として、
・「ヒップヒンジ動作」が上手くできない(臀筋・ハムストリングスで重量を受けれない)
・「ポステリオルチェイン」をうまく使えない
・フォームの中に「代償動作」が入っている
の3点が最も多い理由かと思います。
この3点は、いずれもフォームの問題が原因となります。
それでは、ルーマニアンデッドリフトの「腰の痛みを解消するフォーム」をご紹介します。
- 【ルーマニアンデッドリフト】で強化する『ポステリオルチェイン(ハムストリングス・臀部・背部)』とは?
- ”腰の痛み”を無くす【ルーマニアンデッドリフト】のフォームとやり方
- ”腰の痛み”の原因になる【ルーマニアンデッドリフト】の「失敗例」と「からくり」
- ”腰の痛み”を無くす【ルーマニアンデッドリフト】 まとめ
【ルーマニアンデッドリフト】で強化する『ポステリオルチェイン(ハムストリングス・臀部・背部)』とは?
まずは、「ルーマニアンデッドリフト」で強化することの出来る部位を、見ていきましょう。
左側の「ハムストリングス・臀部」がメインターゲットとなります。
この部分には、「ルーマニアンデッドリフト」の動作の中で、「伸張〜収縮」の刺激が強く入ります。
後に詳しく書きますが、”伸張刺激”が「ハムストリングスの強化」にとって非常に有効で、また”伸張”から得られる「ストレッチ効果」により柔軟性の向上も望めます。
右側はわかりやすく「補助筋」と書いてありますが、この「補助筋」の働きが上手くいかないと、「ルーマニアンデッドリフト」は上手くできません。
そして、フォームの乱れからくる「腰の痛み」については、ほとんどが「補助筋」を上手く使えていない事が、とても多いです。
”ルーマニアンデッドリフト”では、主働筋「ハムストリングス・臀部」補助筋の「背部」の「体の後面にある筋肉」を連動させることを”ポステリオルチェイン”と呼びます。
”ポステリオルチェイン”の連動をうまく使うことが「ルーマニアンデッドリフト」の成功の鍵となります。
そして「ポステリオルチェイン」をうまく連動させるのに必要な動作が「ヒップヒンジ」動作です!
では、”ルーマニアンデッドリフト”の一連の流れから、この2つの重要な動きと連動について見て行きましょう。
”腰の痛み”を無くす【ルーマニアンデッドリフト】のフォームとやり方
まずは、”ルーマニアンデッドリフト”の一連の流れを見てから、パート分けして解説していきましょう。
①スタートポジション
②「ヒップヒンジ動作」による下降局面
③ボトムポジション
上記が、”ルーマニアンデッドリフト”の一連の流れになります。
ここで、必ず覚えていてもらいたいのが、先程も出てきました「ヒップヒンジ動作」です。
なんとなくイメージを持っている方は多いと思いますが「ヒップヒンジとはなにか?」「ヒップヒンジはなぜ必要なのか?」という所を、先に解説していきます。
腰を痛めない【ルーマニアンデッドリフト】に必ず必要な「ヒップヒンジ」とは?
まずは「ヒップヒンジとは何か?」という点から説明していきます。
「ヒップヒンジ」は背中を真っ直ぐ(脊柱ニュートラル)に保ちながら、「股関節」を主体として行う動作のことを言います。
「よくわからない!!」という方は、『背筋を真っ直ぐ伸ばして、お尻を後ろに突き出しながらお辞儀をする』といったイメージを持ってください。
ヒップヒンジの練習方法はこちら
では、「ヒップヒンジが必要な理由」についても見ていきましょう。
・脊柱の安定
脊柱がニュートラルに保たれるため、「腰椎」に負担が集中しにくくなります。
”ルーマニアンデッドリフト”での腰の痛みは、この「脊柱が安定したポジションではない」という原因が大きく関わってきます。
・「股関節」を中心として動く
股関節は、「臀筋」や「ハムストリングス」などの「股関節伸展」の大きな力を持っている筋肉が存在します。
強い筋肉で上手く重量を受けることが「強化」に繋がり「柔軟性向上」にも役に立ちます。
逆に「臀筋・ハムストリングス」で受けれない場合は「腰」で重量を受けることになるため「腰痛」の原因となります。
・「ポステリオルチェイン」を最大限活かすことが出来る
「脊柱を安定」させるのには「広背筋や起立筋や腰方形筋」などの、多くの背中を筋肉が働きます。
そして「股関節を中心として動く」ことにより、「臀筋・ハムストリングス」などの、強い「股関節伸展筋」が働きます。
この「体の後面の筋肉」が連動して、働くことが「腰椎」の負担を少なくし、”ルーマニアンデッドリフト”のトレーニング効果を最大限向上させます。
この「ヒップヒンジ動作」をうまく行い「ポステリオルチェイン」の連動を出すことが「腰の痛み」を無くす方法となります。
それでは、先程の「ヒップヒンジ」と「ポステリオルチェイン」を加味し、”ルーマニアンデッドリフト”のフォームについて、「セッティング〜スタートポジション」見ていきましょう。
腰を痛めない【ルーマニアンデッドリフト】の「セッティング〜スタートポジション」
機材の環境上、できない場合を除いて、必ず「トップポジション」から始めましょう。
床から引き上げる労力や、その際の脊柱起立筋の負荷はもったいないからです。
そしてもっとも重要な理由が「ポステリオルチェイン」をうまく使い「背中のテンションを保ちやすい」ということです。
これは、後に詳しく説明します。
それでは、「セッティング」を見ていきましょう。
①グリップを決める
グリップは「肩幅よりやや広め」で握ります。
②背中の緊張を高める
ここがすごく大事なポイントになります。
”ルーマニアンデッドリフト”の動作中は常に「背中の緊張」を保たなければいけません。
なのでしっかりと「セッティング」の段階から作りましょう。
矢印方向に肩甲骨を下げ「広背筋」に緊張をもたせ「胸を張る」ようにします。
同時に「上腕の外旋」を行ってあげると、より「背中がタイト」になると思います。
「肘の表側を鏡側に向ける」といったイメージでもいいです。
③臀筋に力を入れ、ラックアップ
「背中の緊張」を保ったままラックアップします。
この時に「股関節を外旋」させ、臀筋に力を入れます。
少しわかりにくい方は、矢印の方向の「おしりの穴をキュッと締める」イメージです。
ここまでが「セッティング」になります。
この時点で「背中の緊張」「臀部の緊張」があることを意識してください。
では、続いて「スタートポジション」です。
「スタートポジション」でも、さきほど作った「背中と臀部の緊張」をキープします。
そして足幅は「腰幅程度」で、つま先の向きは「真っ直ぐ」か「やや外向き」にします。
基本的には、主働筋の「ハムストリングス・臀部」で負荷を受けます。
・狭すぎると「股関節」が動かしにくくなったり
・逆に広いと「骨盤」のコントロールが難しくなります。
=「腰幅程度」が最も「ヒップヒンジ動作をしやすい」ということです。
腰を痛めない【ルーマニアンデッドリフト】の「ヒップヒンジ〜ボトムポジション」の注意点
「セッティング〜スタートポジション」で作った形を崩さずに、「ヒップヒンジ 」を行いながら、バーを下ろしていきます。
その中で「5つの注意点」があります
1. バーを体から離さない
2. 重心位置
3. 膝の角度とハムストリングスのストレッチ
4. 顎の向き
5. ロックアウト
の5点をそれぞれ解説します。
1. バーを体から離さない
腰を痛めないためにも、必ず必要な動作になります。
ポイントは、 しっかりと「背中の緊張」でバーを引きつけます。
「背中の緊張」を保つことが出来ると、バーは基本的には離れていきません。
バーが、離れてしまうと「腰〜バー」の距離が長くなり、その分だけ「腰」に負担がかかります。
意識としては、
バーをしっかりと自分の体の方へ 押し付け(背中の緊張で)バーを下降していく時は、大腿部の上を滑らせていくようなイメージ
でやってもらうといいです。
このときも常に「胸を張る」イメージはもちましょう。
特に「ボトムポジション」では、体制や、肩甲骨がぶれやすいので「背中の緊張を高める強い意識」が必要です。
2. 重心位置
基本的には【7:3】の割合で、「踵重心」にしましょう。
踵に重心を乗せることで、「臀部・ハムストリングス」の伸張を得やすい姿勢を保ちやすくなります。
また、前に重心を乗せると「腰が曲がる」原因になったり、大腿四頭筋の関与が高くなる可能性があります。
「重心位置」のもう1つの注意点は、「トライポッド(母趾球・小趾球・踵)は、しっかりと接地させ、特につま先が浮かないように気をつけましょう。
3. 膝の角度とハムストリングスのストレッチ
「膝」は必ず曲げましょう。
ただ曲げるといっても、ボトムでの赤丸程度のほんの僅かです。
動きは、「股関節」が主体ですが、膝が完全に伸び切っていると、上手く骨格の連動が出ません。
なので「膝はボトムに行くに連れ、自然に軽く曲がっていく」感覚でおこないましょう。
次に「ハムストリングスのストレッチ」です。
皆さんこの画像をみて「可動域狭くないか?」と思った方もいると思います。
この「ボトムポジションで、どこまでバーを下ろすか?」という点が非常に重要なのです。
そして、画像の「可動域」は、決して狭くありません。
では、「どこまでおろせばいいのか?」というポイントを書きます。
- 「背中の緊張」を保てる範囲
- 切り返しでブレない範囲(後に解説)
- 「ハムストリングス」に伸張を感じた位置
この3点はとても重要です。
特に『「ハムストリングス」に伸張を感じた位置』は、しっかりと感じてください。
その伸張を感じた位置から「更にストレッチをかけてやろう!」ということは、やめてください。
これが、「背中の緊張」を緩め、腰が丸くなり「腰が痛い」という原因に直結します。
そして、必ず気をつけてもらいたいのが、
「バーを下ろすのが目的ではない」ということです。
「どこまで下ろす」ではなく、「背中の緊張を保てる、ハムストリングスの伸張」を目安に動作を行うようにしてください。
SNSなどを見ていると、すごく「可動域が広い」というものを見受けられることも多いです。
「ハムストリングス」などに、かなりの柔軟性があれば別ですが、「可動域を広く見せるからくり」もよく見られます。
これは、後に「失敗例」と共に、紹介していきます。
4. 顎の向き
動作中は顎をあげずに、頭の状態はフラットを保ちましょう。
矢印のように、目線を「少し先の床を見る」というイメージです。
顎が上がると、『胸椎の伸展=胸を張る』といった「背中の緊張」を保つための動作が、難しくなります。
その理由は「胸椎の伸展=胸を張る」動きを、顎が上がったことにより「頚椎の伸展」が代償運動として起こるからです。
なので、顎が上がらないように注意してください。
5. ロックアウト
ここはかなり「見落とされやすい点」と、「誤解を招きやすい点」になります。
「筋肉から刺激を抜かないために、ロックアウトをしない」と発信されてる方もいますが、ことフリーウェイトにおいては、必ずロックアウトが必要です。
このロックアウトをしないことも、"ルーマニアンデッドリフト "で「腰を痛める」大きな原因となります。
ロックアウトの必要な理由として、
- 無理な体制での、動作の続行を避け、立て直す時間を作る。
- 臀部に最大の収縮を与える
- 腹圧を高めるための、呼吸を整える
この3点行えることで、フォームの安定感を増します。
フォームの安定感が増す=怪我のリスクが下がります。
実際に、「ロックアウト」について見ていきましょう。
「ロックアウト」の重要なポイントは、「背中と股関節(殿筋)でロックアウト」ということです。
背中=『胸を張り・広背筋、僧帽筋を使い肩甲骨を寄せる』
股関節=『股関節は、ボトムから伸展180度(0度)まで、伸展&外旋動作』で殿筋とハムストリングスで完遂する。
この時の注意点は、必ず「腰椎の過伸展に気をつける」ということです。
この動作が、「腰椎を破壊」します。絶対やめましょう。
画像の通り、体の中芯に「軸」があり、「ロックアウトポジションでバーをいつまでも保持出来る」ような「楽な位置」が正しいロックアウトです。
「楽な位置」にもっていくことで、
- 呼吸を整え、腹圧を高める
- 再度、背中の緊張を高め、腰椎の負担を減らす
といったことが可能になります。
この5点が「ヒップヒンジ〜ボトムポジション」のポイントになります。
では、次はよくある「失敗例」と共に、さきほどの「可動域を広くとるからくり」も見ていきましょう。
”腰の痛み”の原因になる【ルーマニアンデッドリフト】の「失敗例」と「からくり」
1. 「顎が上がった状態」での動作
顎が上がると、先程も言いました「胸椎の伸展」を「頚椎の伸展」が代償します。
こうなると、「首を痛める」可能性と、「背中の緊張」を保ちにくく「腰の怪我」に繋がります。
赤丸印を見てもらうと「背中の緊張」が抜けているのがわかります。
顎が上がらないように、注意しましょう。
2. バーが体から離れる
これは必ず避けましょう。
水色の矢印を見てもらえればわかりますが、「腰〜バー」の距離が離れます。
これは「モーメントアーム」といいますが、とにかく「重りと対象の場所」が、遠ければ遠いほど「腰に負担」が掛かります。
3. 背中の緊張が保てていない(可動域のからくり)
ものすごく可動域が広くなっていますね。
柔軟性が高い方を除いて、平均的な柔軟性(筆者含め)の方には、基本的にはここまでバーはおろせません。
この「からくり」は「肩甲骨の外転・上方回旋」による「腕が伸びているだけ」なのです。
誰しもが「直立から、つま先を触る事ができるか?」 をやったことがあると思います。
この失敗例の”ルーマニアンデッドリフト”は「それ」をしている事になります。
重りが乗っていなければ大丈夫ですが、バーは最低でも「10kg以上」重さがあります。
それが、繰り返し行われることで「腰」に負担が掛かり、「怪我」に繋がります。
なので「肩甲骨の内転・下方回旋」で「背中の緊張」を高め、正しい”ルーマニアンデッドリフト”を行いましょう。
”腰の痛み”を無くす【ルーマニアンデッドリフト】 まとめ
以上が、【腰の痛みを無くす、ルーマニアンデッドリフト】のフォームのポイントになります。
少し長くなりましたが、もう一度ポイントの整理をします。
- 「背中の緊張」は常に高め、バーを離さない
- ヒップヒンジでの「股関節」を主体で動かす
- ボトムは「ハムストリングス」のストレッチの伸張を感じる位置
- ロックアウトを確実に「背中と股関節」で行う
- 体の後面の筋肉すべてを動員する(ポステリオルチェイン)
の5点を意識しましょう!
そうすることで、「腰の負担」は必ず減ります。
そして、ものすごくトレーニングとして優秀な、"ルーマニアンデッドリフト "の恩恵を受けることができます!!
それでは、今日はここまで〜 次回、【ヒップヒンジ】”腰痛”を防ぎ、”股関節”の動きを改善!3つの練習方法とコツとは?おたのしみに!