今回は「殿筋の機能低下とインピンジメント」について解説していきます。
*殿部の筋肉の全体を「殿筋」と一括りにしています。
股関節のインピンジメントの原因はこれまでにも
などを紹介してきました。
その中でも
「殿筋や股関節後方組織の硬さが大腿骨頭を前に押し込み、インピンジメントの原因になる」
と紹介してきましたが、
「硬さ」ではなく、「殿筋が上手く働かない」となると、どうなるのでしょうか?
実は、「殿筋が働かないと股関節が緩くなり、インピンジメントの原因」になります。
殿筋がうまく働かない状態では、
・股関節屈曲するだけで「ポコポコ」鳴る
・スクワット・ランジなどで「股関節に詰まり・痛み」
などの、兆候が見られます。
では、
・股関節前面の緩さとインピンジメントに関係
・股関節の緩さに対して効果的な殿部のトレーニング方法
についてみていきましょう。
- 股関節前面の緩さとインピンジメントの関係とは?
- 殿筋が働かないことによる「骨頭の前方偏位」とは?
- 股関節インピンジメントを解消する ブルガリアンスクワット
- 股関節インピンジメントを解消する”殿筋トレーニング” まとめ
股関節前面の緩さとインピンジメントの関係とは?
本題に入る前に誤解を避けるため「股関節前面の緩さ」について説明をしておきます。
「股関節前面の緩さ」=「股関節の前に付いている関節包・靭帯の緩さ」のことを指します。
股関節前面に付いている筋肉ではありません。
むしろ、股関節前面の筋肉は硬く柔軟性が低くなることが多くなります。
「関節包、靭帯の緩さ」に影響を与えるのは、
・股関節”前面”の関節包・靭帯の”先天的な緩さ”
・股関節”後面”の関節包・靭帯・筋の”硬さ”
・殿筋の機能低下
の3つの要因が合わさっている例が多いです。
以前の記事で紹介した検査方法(FABER検査)で、骨頭が前方に押し出される”緩さ”などがその例となります。
股関節が動く上で、
「股関節の緩さ(前面の関節包や靭帯の緩さ)」があると「大腿骨頭が過剰に前方移動する」ことになります。
「関節包や靭帯の緩さ」は主に、
・生まれつきや日常生活が原因
・大腿骨頭の過剰な前方移動に押し込まれて
といった理由があります。
そして、「大腿骨頭が過剰に前方移動する」原因として、
「殿部の筋肉が機能していない」ことがあげられます。
それらを踏まえた上で「股関節前面の緩さ」は、
このように、インピンジメントの原因となります。
次に「大腿骨頭の過剰な前方移動を防ぐ殿筋の役割」について見てみましょう。
殿筋が働かないことによる「骨頭の前方偏位」とは?
「大腿骨頭が過剰に前方に移動する」とありましたが、この過剰な移動を止めているのが「殿筋の役割」となります。
なので「殿筋」が働かずに柔軟性が無くなると「大腿骨頭の前方偏位」が起こります。
「骨頭の前方偏位」と聞くと、以前肩の怪我の原因として紹介しました。
肩関節と股関節は兄弟のようで、怪我をする原因も非常によく似ています。
怪我を起こさないためにも、殿筋のトレーニングはとても重要です。
殿筋(お尻のトレーニング)というと、
・ヒップスラスト(参考画像はヒップリフト)
・バックキック
など、最近流行りの種目を思い浮かべる方もいると思いますが、股関節インピンジメントに対しては筆者はオススメしません。
理由は、
「ヒップスラストFABERに近い形になる」
「バックキックは、股関節の前方移動を助長させる」
といった動きになり得るからです。
では筆者が、
「股関節インピンジメントに対してオススメする殿筋トレーニング」
を紹介します。
股関節インピンジメントを解消する ブルガリアンスクワット
「ブルガリアンスクワット」を選択した理由としては、
・股関節伸展位にならなくとも、殿筋に効果的な刺激を与えられる
(股関節前方移動を防げる)
・片足動作なので、バランスをとるため股関節のインナーが働きやすい
(股関節を安定化させる)
・殿部以外の筋肉の多くが運動に参加する
(骨盤の位置を保持するなど、体幹部の筋も働く)
などの大きなメリットがあります。
では、実際に
「股関節インピンジメントに対してのブルガリアンスクワット」を見ていきましょう。
では、ポイントを解説していきます。
スタートポジションは特に意識する点はありません。
ボトムポジション
①骨盤の状態は常に中間位にする
骨盤を前傾させるとハムストリングスの関与が強くなります。
また、ランジでの股関節詰まり感も出やすくなります。
メインは「殿筋」なので、骨盤の位置は中間位をキープします。
*イメージは少し後傾させるくらいでも良い
②胸は張りすぎない
胸を張ると「腰椎の伸展」や「骨盤の前傾」が入りやすくなります。
*特に殿部が上手く機能していない人
なので、背中はすこし丸めるくらいのイメージで動作をおこないます。
③膝はつま先のラインくらいに設定
これは個人差がありますが、これくらいを目安に。
あまりに膝が前に出ると膝に負担が掛かります。
では、一連の流れを見てみましょう。
このトレーニングで一番大切なのは、
「股関節屈曲位で殿筋を働かせ、股関節前面に負担をかけないこと」
になります。
特に重たいダンベルを持つ必要もないので、
「ボトムで殿筋にストレッチがかかり、そのストレッチを戻すイメージ」で刺激してあげれると良いです。
股関節インピンジメントを解消する”殿筋トレーニング” まとめ
以上がインピンジメントに対してのトレーニング方法になります。
今回紹介した「ブルガリアンスクワット」は、足の長さなどフォームに個人差が大きく出ますので、少しずつ自分で試しながら「殿筋を上手く使えるフォーム」を見つけてみてください。
初めはダンベルを持つ必要もありませんし、限界までやる必要もないので動作をなるべく丁寧に行うようにしましょう。
また「殿筋の活性化」にはこちらの「ケーブルプルスルー」も非常に効果が高くオススメです。
股関節の伸展が大きくなりすぎないように、注意してください!
それでは、今日はここまで!次回、お楽しみに!