今回は「腸脛靭帯炎(膝の外側の痛み)」について書いていきます。
「腸脛靭帯炎」は、ランニングで痛めるとが多いことから「ランナーズニー」などと言われますが、
「スクワット」や「スモウデッドリフト」でも痛めることもあります。
痛める原因としては、
・殿部、大腿筋膜張筋の柔軟性不足
・殿部の筋力不足
などがよく指摘されます。
ですが、上記の原因以外にも
スクワットや、スモウデッドリフトで「膝の外側を痛めやすい要因」として
「股関節の開排(かいはい)制限」
が見られます。
では、
・スクワット・スモウDLで腸脛靭帯炎になる理由
・開排制限を解消するための方法
についてみていきましょう。
- スモウデッドリフト・スクワットに重要な「股関節の開排」とは?
- 腸脛靭帯炎になる理由
- スモウデッドリフト・スクワットと腸脛靭帯の関係
- 股関節開排の動きを良くするストレッチ
- 腸脛靭帯炎と股関節開排制限まとめ
スモウデッドリフト・スクワットに重要な「股関節の開排」とは?
まずは「股関節の開排」について見ていきます。
「股関節の開排」=「赤ちゃんのオムツを変える時」をイメージしてください。
「スモウデッドリフトのスタートポジション」
「スクワットのボトムポジション」に、非常に似た動きになっています。
開排の可動域が十分に取れることが怪我のリスクを減らしますが、日常生活の姿勢などや体の成長に伴い、可動域が失われやすい特徴もあります。
「開排可動域の改善」の前に、
「腸脛靭帯炎」について先に見ていきましょう。
腸脛靭帯炎になる理由
まずは簡単に「腸脛靭帯炎」について説明します。
腸脛靭帯炎は「膝の屈伸運動」で強い負荷・繰り返しの負荷が加わり「腸脛靭帯」と「大腿骨外側上顆」が擦れるような刺激を受け、炎症を起こします。
次に「膝の屈伸運動で擦れる理由」について見ていきます。
腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の位置関係は、「膝の屈曲角」で変化します。
股関節の角度や、個人差は少しありますが、
「膝屈曲30~50°以下」では、腸脛靭帯は大腿骨外側上顆の「前方」に。
「膝屈曲30~50°以上」では、腸脛靭帯は大腿骨外側上顆の「後方」に位置します。
腸脛靭帯は、膝屈曲30~50°の区間で、
「腸脛靭帯が大腿骨外側上顆を乗り越えて前方〜後方に移動」します。
その「乗り越える際に擦れる刺激」が生まれます。
「擦れる刺激」に対して、クッションの役割を果たす「滑膜」が本来なら守ってくれますが、繰り返しの刺激や、強い刺激によって「滑膜に炎症」が起こることを”腸脛靭帯炎”と言います。
では、
「スモウデッドリフト・スクワット」で起こる理由について見ていきましょう。
スモウデッドリフト・スクワットと腸脛靭帯の関係
では実際に、
スモウデッドリフト・スクワットで「痛みが出る理由」を先ほどの「腸脛靭帯炎になる理由」と共に見ていきましょう。
まずは「スモウデッドリフト」です。
スモウデッドリフトは、ファーストプルの場面では背中で浮かすのではなく「足の力」でバーを浮かす方がほとんどです。
スタートポジションの「膝屈曲角度」は個人差はありますが、ほとんどが「腸脛靭帯が大腿骨外側上顆の後ろに位置」する、膝関節30~50°より屈曲しています。
その状態から、高重量を地面から浮かすために「膝の伸展」を行います。
そこで「腸脛靭帯は大腿骨外側上顆を乗り越え」前方に位置を変えます。
この場面で見られる怪我で一番多いのは、
「内転筋群を痛めた例」になります。
「内転筋の怪我」に関しては、カイさんのブログが非常に参考になるので、ぜひ読んでみてください!
ですが、内転筋だけではなく
この場面は「腸脛靭帯を痛めやすい場面」でもあります。
「腸脛靭帯を痛める例」で多く見るのが、
・内転筋、四頭筋が十分に強い(殿部が弱いわけではない)
・「股関節開排」可動域の限界で動作を行っている。
ことが見られ、
更に、多少不利な形でも「スモウデッドリフトを成立させることが出来る、基礎筋力の強い人」に多いように感じます。
「不利な形」とは、
股関節の開排可動域が狭いため、腸脛靭帯の役割「ニーアウト方向への制御」が上手く働かず、殿筋の力をうまく伝えれない状態です。
殿筋の力が伝わらない分、大腿筋膜張筋が過剰に働いたり、
重量を受ける形がアンバランスになることで、腸脛靭帯が強い負荷を受ける原因にもなります。
次に「スクワット」です。
スクワットの動作では、
先程の「膝の屈伸による擦れる刺激」+「ニーイン」で、腸脛靭帯の負荷が大きくなります。
ニーインについてはこちら
「ニーイン」の姿勢を取る理由は、上記記事のメリット部分もありますが
「股関節が開排動作の真逆に動く」ことになります。
「股関節の開排をキープ出来ない」ことが、腸脛靭帯に負担のかかる理由の1つになります。
このようにスモウデッドリフト、スクワットで
腸脛靭帯のストレスが増える要因に「股関節の開排制限」が関係してきます。
では「股関節の開排可動域を改善する方法」について見ていきましょう。
股関節開排の動きを良くするストレッチ
「 股関節の開排制限の原因」になる筋肉は
・大内転筋
・長内転筋
この2つが可動域制限に大きく関わります。
2つの筋肉のストレッチ方法を紹介します。
大内転筋のストレッチ方法
上向きで寝転び、股関節「屈曲・外転・外旋」にします。
その状態から、足を持ち自分の方に引っ張ります。
*足を持つ位置は、上画像「足首」でも、下画像の「膝」でもやりやすい方で構いません。
赤丸部分の「大内転筋」に伸張感があればOKです。
20秒を2~3セット行いましょう。
長内転筋のストレッチ
長内転筋のストレッチは、
股関節「伸展・外転・外旋」します。
伸展を楽に行うために、椅子を利用すると簡単にできます。
赤丸の「長内転筋」に伸張があればOKです。
20秒を2~3セット行いましょう。
腸脛靭帯炎と股関節開排制限まとめ
以上が「腸脛靭帯炎と股関節開排制限」の関係についてです。
腸脛靭帯の負担を減らすためには、股関節の柔軟性は欠かせません。
そして余裕のある可動域にプラスして、
股関節開排の位置を保つためには「殿筋の強化」も必要になります。
なので、
・大内転筋、長内転筋のストレッチ
・大殿筋、中殿筋などの殿筋強化
をすることが「腸脛靭帯炎」を防ぐための近道といえます。
うまく自分の体の状態に合わせて取り入れてください。
それでは、今日はここまで!次回、おたのしみに!