今回は、股関節の前側の”詰まり感・痛み”に対しての「チューブエクササイズ」について書いていきます。
以前は、ストレッチについて書きましたが、「それでもなかなか”詰まり感・痛み”が取れない」といった方もいるかと思います。
ストレッチは、確かに股関節周りの「柔軟性」を上げますが、
「股関節を正しい位置に留めておく」といった効果はありません。
今回紹介する「チューブエクササイズ」は、
「股関節を正しい位置に留めておく効果」がありますので「ストレッチ」で改善しない方や、股関節の動きが悪い方にオススメです。
*「チューブエクササイズ」前に、股関節の柔軟性を上げるために、下記記事の「ストレッチ」をしてもらうことを、オススメします。
また、今回重要な役割を果たす「外旋六筋」について、解剖学的な要素についても詳しく解説していますので、こちらの記事も是非ご覧ください。
- 股関節の前側の”詰まり・痛み”に対して「ストレッチ」だけでは、効果不足の理由
- 【スクワット】股関節の前側の”詰まり・痛み”の原因「外旋六筋」
- 【スクワット】股関節の前側の”詰まり・痛み”の原因「腸腰筋」
- 【スクワット】股関節の前側の”詰まり・痛み”の原因を解消するチューブエクササイズ まとめ
股関節の前側の”詰まり・痛み”に対して「ストレッチ」だけでは、効果不足の理由
冒頭でもいいましたが「ストレッチしてもなかなか改善しない」といった理由について書いていきます。
主に考えられる理由が3つあります。
1, ストレッチ方法を間違い、効果が最大限出ていない
2, 原因の場所がストレッチした場所と別にある
3, ストレッチ後の「股関節が不安定」である
の3つが考えられます。
この3つのうち、
1. 紹介したストレッチ方法は比較的簡単にできると思いますので、方法を大きく間違えるといったことは、考えにくいと思います。
2. 「原因が他の場所にある」ということは、「スクワットフォーム」や、他の「足首」「肩」などの柔軟性なども大きく関係しているので、なかなか一朝一夕とはいきません。
3. ストレッチ後の股関節は柔軟性が増していますが、まだ「前に押し出さえた状態」で柔軟性を得ていたり、元の「正しい位置」に戻っていない可能性があります。
この「正しい位置」に戻さないことには、「”詰まり感・痛み”はなかなか取れにくい」こともあります。
もちろん「ストレッチ」のみでも、効果は高いのですが、「チューブエクササイズ」と組み合わせていくことで、「より高い効果」を得ることが出来るので、やり方を見ていきましょう。
【スクワット】股関節の前側の”詰まり・痛み”の原因「外旋六筋」
この股関節の”詰まり・痛み”で、度々登場しています「外旋六筋」です。
*もう一度、簡単に「外旋六筋」についておさらいしますが、「もう前回の骨格動作の記事を読んだ!」という方は、「チューブエクササイズ」の方法まで、飛ばして頂いても大丈夫です!
「坐骨神経痛」との関与を知りたい方は、是非そのまま読み続けてください。
それでは「外旋六筋」の構造を簡単に復習していきましょう。
「外旋六筋」は股関節の後方にある、股関節のインナーマッスルです。(青色筋肉)
この「外旋六筋」には、様々な作用がありますが、中でも重要なことが「股関節外旋と股関節の安定化」になります。
「股関節」は、「肩関節」とよく似た構造をしていて、とても動きの大きい関節です。
「肩関節」同様、インナーマッスルが「関節の安定化」に貢献します。
ただ、悪い面でも「肩関節」と似ている分、このインナーマッスルである「外旋六筋」の働きが悪く筋が硬くなると、スクワットなどの「しゃがみ動作」などで”詰まり感・痛み”に繋がりやすくなります。
このような形で、「大腿骨頭」が前に押し出され、屈曲すると”詰まり・痛み”に繋がります。
この状態が、スクワットの際に起きている可能性が高いです。
また、皆さん一度は聞いたことがあるかも知れませんが、「坐骨神経痛」の原因ともなります。
坐骨神経は、「外旋六筋」の間を通過します。
個人個人により、通過場所は少し変わるのですが、最も多いのが「外旋六筋」の1つである、「梨状筋」の下を通過する形です。
「梨状筋」が動きが悪く、硬くなると、その下を通る坐骨神経を「梨状筋」が圧迫します。
そうすると、"足にしびれ"が出たり"足に痛み"が出たりします。
この「梨状筋」が坐骨神経を圧迫することを、「梨状筋症候群」と呼びます。
この「梨状筋症候群」はマッサージなどしてあげると、一時的に軽快しますが、また同じ症状を繰り返しますので、「根本的にしっかり動きをつける」という事が、とても大切になってきます。
また「梨状筋症候群」になりやすい方は、
- ”デスクワーク”で座っている時間が長い
- ”腰痛”があり、腰周りの動きが悪い
- 下半身の柔軟性が低い
などが考えられます。
そんな「梨状筋症候群」に対しても、スクワットの"股関節の詰まり・痛み"に対しても有効なのが、これから紹介する「チューブエクササイズ」と、前回記事の「ストレッチ」になります。
それでは、チューブエクササイズを見ていきましょう。
股関節の前側の”詰まり・痛み”を解消するチューブエクササイズ「クラムシェル」
チューブを持っていない方や、ジムに置いていない。という方は、このチューブを使ってもらうといいとおもいます。
*参考画像のものとは、すこし違います。
色ごとに強度が別れており、少し慣れてくると強度をあげることができます。
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今回は、チューブをつかって「クラムシェル」 というエクササイズを行います。
「クラムシェル」では、股関節単独の「外旋」といった動きを出し「外旋六筋」の働きを活性化させ、動きをつけます。
また、中殿筋などの周囲の筋肉も、同時に刺激することが出来るため、ウォーミングアップにも、もってこいです。
それでは、「クラムシェル」のやり方を紹介します。
①ポジションのセッティング
1. 膝上10cmくらいの位置にチューブを巻きます。
2. エクササイズする方の足を上にして、横向きに寝ます。
3. 膝関節・股関節共に50~60度程度曲げましょう。
ここは大体で構いません。極端に「深く曲げる・浅く曲げる」ということだけ、気をつけてください。
そして、膝・踵・つま先を合わせましょう。
ポジションのセットは終了です。
それでは実際にエクササイズを行っていきます。
①踵は常につけておく
この意味は、2つあります。
- 踵が離れることで、「股関節外転」の動きが大きくなる。
- 踵を離すことで、股関節”外旋”の可動域の「代償」を体幹部・骨盤がおこなう。
これでは、エクササイズの効果が減ってしまいますので、注意します。
②股関節を”外旋”させる
ここが少し難しいところです。
「膝を開く」という意識では、股関節「外転」の動きが出やすくなります。
なので、イメージとしては、「踵を軸に股関節”外旋”」をするといいです。
上に乗っている「踵」を、下の足の「踵」の方に、押さえつけるような力をかけながら、股関節”外旋”するのも1つです!
③動作中「骨盤・上半身」は動かさない
これが最も多い「クラムシェル」の失敗例かと思います。
「クラムシェル」は、チューブを引っ張ることが目的ではありません。
「外旋筋群」を活性化させることが目的です。
それでは、失敗例の画像とともに見ていきましょう。
「クラムシェル」で上半身と骨盤の代償が出やすい原因は、
- チューブの強度が強すぎる
- 可動域を大きく取ろうとする
- ”外旋”が上手くできない
が、最も多いかと思われます。
チューブの強度の目安は、「20回〜25程度で、臀部の奥のほうが疲労してくる強さ」を基準にしてください。あまりチューブの負荷が強いと、”外旋”の動きは出しにくくなります。
可動域は、普段のトレーニングであればもちろん大きい方がいいのですが、今回は”外旋”にターゲットをしぼったエクササイズなので、可動域は狭くなります。
30~40度程度開ければ、十分です。
”外旋”が上手くできない場合は、勝手に「骨盤」や「上半身」が動いてしまいます。
その場合は、「背中・骨盤・お尻」を壁につけ動作を行ってみてください。
壁があれば、体を捻ることはできません。
もし、壁がない場合は、上にある手で「骨盤」を抑えてあげるといいです。
そして、「骨盤・上半身」が捻りそうになると手で抑えるのではなく、「自分は現状ここまで『外旋』出来るのか」ということを覚え、丁寧に動作を続けてください。
きっと動きは良くなります。
以上が、【スクワット】での、股関節の前側の詰まり・痛み、「梨状筋症候群」を改善するチューブエクササイズ「クラムシェル」になります。
回数は20~30回を2~3セット行うといいです。
注意点としては「代償動作」を出さないことに意識を持ってください!
【スクワット】股関節の前側の”詰まり・痛み”の原因「腸腰筋」
「外旋六筋」の次は「腸腰筋」について、紹介していきます。
これも下記のストレッチ記事を見て理解した!という方は、解剖の内容が被りますので「エクササイズ」まで飛ばしてもらって大丈夫です!
上記画像の、2本の筋肉の「腸骨筋(右側)」と「大腰筋(左側)」をあわせて「腸腰筋」と呼びます。
「腸腰筋」には、様々な役割がありますが、大きな役割は「股関節屈曲」になります。
”股関節の屈曲”の役割があるのに、自らの役割の、”股関節の屈曲”で「詰まり」や「痛み」が出るのは「腸腰筋」と「股関節」の位置関係が大きく関係しています。
「腸腰筋」の場所は、股関節の「前側と内側」を通ります。
そして「前に少し倒れ・すこし内に向き・前に詰まった」状態の股関節(大腿骨)に、とても近い位置を通るので、筋肉の状態が悪いと「詰まり」や「痛み」を起こします。
また、「大腰筋」は「腰椎」に付着しているので、動きが悪くなると、「腰椎の伸展(前傾)」を強めて”腰痛”の原因になったりもします。
特に、デスクワークで座る時間が長い方や、自転車で普段から長距離移動される方は、硬くなりやすい筋肉です。
「なぜ固くなるか?」というと、デスクワークも自転車も常に「股関節屈曲」しているからです!
「腸腰筋」が固くなると、「腰椎」「股関節」に大きな悪影響を与えるので、気をつけておきたいところです。
ここで、先程の「梨状筋」と同じキーワードが出てきました。
「腰椎・股関節・デスクワーク」です。かなり座っている時間が長いと、股関節周りの筋肉は固まりやすいので、「15分に1回」は立ち上がるようにしましょう。
股関節の前側の”詰まり・痛み”を解消する「腸腰筋」チューブエクササイズ
それでは早速方法を見ていきましょう。
*左足の「腸腰筋」エクササイズになります。
①まずは、先程のチューブを「両足の真ん中〜足首に近い位置」に巻きます。
このあと動かすので、はずれない位置にしっかりと巻きましょう。
②「左股関節屈曲」を行います。
反対側の足は、そのまま伸ばした状態をキープします。
③更に「股関節屈曲」をします。
この時に「股関節外旋」を同時に入れましょう。
股関節の最大の可動域を出すには、「屈曲」+「外旋」動作が必要です。
また、「腸腰筋」には、股関節「外旋」作用もあるので、しっかりと活性化させることができます。
そして、チューブの強さはここまで屈曲がくれば「しっかりと抵抗がある」ぐらいを目安にしましょう。
ここで、「反対側の足が浮く」などがあると、少しチューブがキツイと思います。
④自身の「最大の屈曲可動域」まで動かす
あとは、動かせる最大範囲で「屈曲+外旋」をおこないます。
横からも見てみましょう。
反対側の足は、動作の最初から、最後まで変わりません。
そして、前回の記事にも書きましたが、股関節の純粋な屈曲角度は「70~80度」です。
ただ、この画像を見ると、最低でも100度は曲がっていますね。
これは、股関節「屈曲」+「外旋」を行うことと、「骨盤の後傾」の連動が動きの中に入っています。
スクワットでは、「骨盤の後傾」が出ると、バットウィンクとなり、腰椎に負担が掛かるので危険ですが、このエクササイズに関しては、「スクワットではない」ので、ある程度「骨盤の後傾」があっても気にしなくても大丈夫です!
とにかく意識することは、股関節「屈曲」+「外旋」です!
ではここで、「外旋」が上手くできていない”失敗例”を見ていきましょう。
真ん中の「屈曲+「外旋」が最も大きな可動域を確保しています。
左側の「屈曲のみ」は、可動域が少し狭くなります。
また「屈曲のみ」では、「腸腰筋」の最大の活性化は得られません。
右側「屈曲+内旋」は、最もダメな例です。
これは、スクワットでの股関節”詰まり・痛み”を助長させる動作であり、この「腸腰筋」のエクササイズに関しても、「可動域が狭い+腸腰筋働きにくい+詰まる方向に動く」という動作になってしまっているので、良い点がありません。
なので、しっかりと股関節「屈曲+外旋」を意識し、「腸腰筋」を活性化させ、スクワットでの”詰まり・痛み”を取りましょう。
【スクワット】股関節の前側の”詰まり・痛み”の原因を解消するチューブエクササイズ まとめ
以上の2つが、スクワットでの股関節前面の”詰まり・痛み”を取るエクササイズとなります。
ストレッチで、しっかりと動く柔軟性をつけたあとに、「関節を正しい位置に留める」働きを持たせるために、しっかりとチューブエクササイズを取り入れてみてください。
こちらの動画のチューブを使った牽引も、股関節の詰まり、痛みの解消にオススメです。
エクササイズのポイントのおさらいとして、
「クラムシェル」では、
- 代償動作を出さないこと
- 股関節の「外旋六筋」を刺激するイメージで行うこと
「腸腰筋」では、
- 股関節「屈曲+外旋」を意識すること
がとても重要になります。
また、キーワードにもありました「腰痛・デスクワーク・股関節が硬い」方には、特におすすめです。
ストレッチと共に時間をかけて、コンディションを整えてあげてください。
それでは今日はここまで〜 次回お楽しみに!