今回は「前鋸筋(ぜんきょきん)が原因となる肩の怪我」について書いていきます。
「今日は前鋸筋のトレーニングをしよう」という方は少ないでしょうし、そもそも「前鋸筋の重要性」自体があまり知られていません。
ですが、
「トレーニングで肩の怪我をしたくないなら、絶対に『前鋸筋』は鍛えるべき」です。
その理由は、前鋸筋には
- 肩甲骨を正しい位置に留めておく役割がある
- 肩と肩甲骨を正しい動きに導いてくれる
- 前鋸筋が働かないと、インナーマッスルが上手く使えない
といった「肩と前鋸筋は密接な関係にある」といえます。
特に、
- ディップスをすると、肩が痛い
- 肩を動かすとポキポキなる(怪我予備軍)
- インナーのトレーニング(肩外旋)で、三角筋後部ばかりに刺激が入る
という方は、「前鋸筋がうまく働いていない」可能性があります。
それでは「前鋸筋の働き」と「肩の怪我を防ぐ、前鋸筋のトレーニング」について解説していきます。
- 肩と肩甲骨の動きに欠かせない「前鋸筋」の役割とは?
- 肩甲骨の浮きを無くし、肩の怪我を防ぐ「前鋸筋のチューブトレーニング」
- 肩甲骨の浮きを無くし、肩の怪我を防ぐ「前鋸筋の腕立て伏せトレーニング」
- 肩甲骨の浮きを無治し、肩の怪我を防ぐ「前鋸筋のストレッチ」
- 肩の怪我の原因になる「肩甲骨の浮き」を治す 前鋸筋へのアプローチ まとめ
肩と肩甲骨の動きに欠かせない「前鋸筋」の役割とは?
まずは「前鋸筋」の位置を確認します。
起始:第1肋骨〜第9肋骨
停止:肩甲骨内側縁(肋骨面)
肋骨と肩甲骨の間をベタッと覆うような形をしています。
次は「前鋸筋の作用(働き)」を見てみましょう。
「肩甲骨外転」は、前にならえをして、さらに指を向こう側へ伸ばすイメージです。
「前鋸筋」は、パンチをよく打つボクサーが発達しやすいので、「ボクサー筋」などともいわれます。
トレーニー達は、「ベンチプレス」の押す局面で動員が高まります。
「肩甲骨外転」について、解説しましたが、実は「前鋸筋の重要な役割」は、これだけではありません。
最も重要な「肩甲骨の浮きを抑える」役割について見ていきましょう。
肩の怪我の原因となる「肩甲骨内側の浮き」とは?
*上からの視点です。
前鋸筋には、「肩甲骨の内側を胸郭に押し付けて、離れないようにする」役割があります。
この役割がとても重要で、「前鋸筋が上手く働かず、胸郭に固定できない」となると、肩甲骨内側が浮いてきます。
「肩甲骨の内側が浮く」ことで、
- 肩甲骨が肩に覆いかぶさる形になり、インピンジメントを起こしやすくなる
- 「肩甲胸郭関節」の機能の低下により、肩の動きが悪くなる
- 肩甲上腕リズムが乱れる
- 肩のインナーマッスルが上手く働かない
など、数多くの怪我の原因となります。
では、「肩甲骨の内側の浮きとは、どんな状態なのか?」を見ていきましょう。
*今回は、十分な筋肉量のある方に協力していただきました。
*腕立ての姿勢は、肩関節がほぼ屈曲90度であるため「前鋸筋の機能低下」を見る指標になります。
画像は「右側の肩甲骨の内側が浮いている」状態です。
肩甲骨の内側が浮いている状態は「翼状肩甲」とも言われ、明らかに、肩甲骨の高さに左右差が出ています。
さらに「肩の外旋動作」でも、「肩甲骨の内側の浮き」が見られます。
*すこしわかりにくいですが、こちらの動画で確認が出来ます。
肩の怪我を無くすために、「前鋸筋の鍛え方とケア方法」について見ていきましょう。
肩甲骨の浮きを無くし、肩の怪我を防ぐ「前鋸筋のチューブトレーニング」
まずは、比較的弱めのチューブを用意します。
そして両手で持ち、肩甲骨の真ん中辺りを通るようにセットし、前ならえをします。
セッティングができたら、前鋸筋の作用である「肩甲骨の外転」運動を行います。
肩甲骨外転が出来たら、ゆっくりと肩甲骨を内転させながら元のポジションに戻します。
動作のテンポとしては、
- 肩甲骨外転動作は1秒
- 最大の外転で2秒止める
- 2秒かけて、肩甲骨内転させながら戻す
- 動作中は常に肘を伸ばしたまま
を意識してみてください。
15~20回を2セット行います。
他にも、バリエーションとしては、
前鋸筋は、幅広い筋肉でついている部分でも作用が少し異なるので、色々な方向に動かすことが大切です。
それでは、もう1つの方法を見てみましょう。
肩甲骨の浮きを無くし、肩の怪我を防ぐ「前鋸筋の腕立て伏せトレーニング」
もう1つは、腕立て伏せの姿勢で「肩甲骨外転」を行います。
先程のチューブとの違いは、肩と腕で体重を支えるので「インナーマッスル」などが肩を安定させようと働き、「肩と肩甲骨の協調性」を向上させることが出来ます。
まずは開始位置は、「腕立て伏せの姿勢」です。
注意点が3つありまして、
- 「肩甲骨内転位」から始める
- 肘は常に伸ばしたまま
- 肩甲骨の真下に腕が来るようにする(肩の真下ではない)
が、このトレーニングのポイントです。
それでは、やり方を見ていきましょう。
これも先程と同じテンポで、
- 肩甲骨外転動作は1秒
- 最大の外転で2秒止める
- 2秒かけて、肩甲骨内転させながら戻す
- 動作中は常に肘を伸ばしたまま
を意識しましょう。
10回2セット程度行いましょう。
「負荷が足りない」と思ったら、「チューブを巻きながら腕立て伏せ」をやると強度を上げることが出来ます。
まずは、丁寧に行い慣れてくると負荷を上げましょう。
肩甲骨の浮きを無治し、肩の怪我を防ぐ「前鋸筋のストレッチ」
次は「前鋸筋の硬さを取る方法」を紹介します。
「前鋸筋を直接伸ばす」ことは可能ですが、肩の関節が硬い人には、すこし無理がかかります。
なので、今回は「前鋸筋を直接触って刺激を与える」という方法になります。
*前鋸筋の位置のおさらい
それでは、さっそく見ていきましょう。
①腕を90度くらいまで上げ、広背筋を相手に見せるように、すこし肩を水平内転させます。
②広背筋の下に指を滑り込ませま、肋骨沿いに指を当てます。
③前鋸筋に指を当てている方の肘を、反対の手で掴みます。
④掴んだ手で、肘を肩甲骨の内側に押し込んでいきます。
これで、「指先が前鋸筋に刺さった」状態です。
⑤押し込んで「前鋸筋に指を刺したまま」肘を上下に動かし、様々な角度からほぐしてあげます。
しっかりと20秒ほど、ほぐしてあげましょう。
肩の怪我の原因になる「肩甲骨の浮き」を治す 前鋸筋へのアプローチ まとめ
以上が、「前鋸筋のトレーニングと、動きをつける方法」になります。
前鋸筋は、体の内側にあり「肩甲骨の浮き」などはなかなか気づくことが出来ません。
ですが、色々なトレーニングで使われたり、「肩と肩甲骨の動きを支える」という意味で、かなり酷使されやすい場所です。
特に、プレス系のトレーニングを多く行う方は、かなり動きが悪くなる可能性が高いので、是非今回ご紹介した方法を取り入れてください。
今回紹介した「前鋸筋」以外にも「肩甲骨の内側の浮き」を抑える重要な役割を果たしている筋肉があります。
次回は、それの紹介と、トレーニング方法について解説予定です。
それでは、今日はここまで〜 次回おたのしみに!