今回は「オーバヘッドプレスを勧める理由」について書いていきます。
体の構造から考えた結論から言うと、
オーバヘッドプレスは「ベンチプレスの肩の怪我予防」に必須の種目と考えています。
ですが、認知度の低いオーバヘッドプレスの立ち位置は、
・ベンチプレスを伸ばすために行う
・サイドレイズ、バックプレスなどの影に隠れている
といった印象があります。
もちろん個人差はありますが、将来的に肩の健康を保つために参考にしてもらえると嬉しいので、
・ベンチプレスでの肩、肩甲骨の偏り
・サイドレイズ、バックプレスのリスク
・オーバヘッドプレスが怪我予防になる理由
について解説していきます。
ベンチプレスで肩の怪我の原因「下制と下方回旋」と「拘縮」
まずはベンチプレスの「動きの偏り」から見ていきます。
ベンチプレスで肩の怪我を防ぐためには「胸を張る(アーチを作る)」ことが重要で、胸椎伸展に加え、肩甲骨の動きは「下制、下方回旋」となります。
下制+下方回旋の「胸を張る動作」には全く問題はありませんが、その位置で「常に固定」されていることが問題です。
問題となるのが「広背筋」「小胸筋」で、共に「肩甲骨下制+下方回旋」の作用を持ち、常に固定されることで拘縮を起こします。
※拘縮=筋、腱、靭帯などが何らかの原因で硬くなり、関節の動きが悪くなる
ギブスを巻く大怪我の経験があればわかりやすいと思いますが、ギブスを外した直後は関節が本来の動き(可動域)が出来ません。
固定され続けた結果、拘縮を起こし関節の動きに制限がかかっているためです。
それと同じように「同じ姿勢」を続けることで起こり、ベンチプレスでは「肩甲骨下制+下方回旋」で固定されたことで、「小胸筋と広背筋が拘縮」を起こします。
いわゆる「巻き肩姿勢」の場合は、広背筋や小胸筋が拘縮を起こしている可能性がかなり高くなります。
横から見たときに「耳の後ろと肩峰の位置」が直線出ない場合は要注意です。
次に肩のトレーニングで人気の高い「サイドレイズ」について見ていきます。
サイドレイズを効かせる意識と肩甲上腕リズムの破綻
この記事内の「効かせる」の定義は、「対象筋に刺激が入った感じがする」とします。
定義を前提とし、サイドレイズで三角筋中部に効かすためには「肩甲骨を動かさない」ことが重要とされています。
本来、肩は肩甲骨とセットで動き、個人差はあるものの、肩の運動には「肩甲上腕リズム」が必ず起こります。
※肩甲上腕リズム:肩と肩甲骨はセットで動き、180°挙上の中で「肩関節120°肩甲骨60°」の「2:1」の割合で動くこと
ですが、「肩甲骨を動かさない意識」では「肩甲上腕リズムを無視し、無理な運動を強いている状態」となります。
そのようなトレーニングを続けていることで本来の「肩甲上腕リズム」が失われ、肩関節に大きな負担となります。
「バックプレス」も代償動作が入りやすいことや、柔軟性が確保されている人以外には危険な種目となります。
ここまでを考慮して、「オーバヘッドプレスがなぜ肩の怪我予防になるのか?」を見ていきましょう。
肩の怪我を防ぐためのオーバヘッドプレスの役割
ここまでは「ベンチプレスでの拘縮」や「サイドレイズの肩甲上腕リズムの破綻」 を紹介し、いずれも「動きの偏りが肩の怪我の原因」でしたが、その偏りを解消するのがオーバヘッドプレスです。
オーバヘッドプレスは肩の挙上動作を行う動きになるので、肩甲骨の動きとしては「挙上+上方回旋」が必要になります。
肩甲骨の動きは「肩甲上腕リズムに沿って挙上しながら、ベンチプレスと反対の動き」となり、関節を「拘縮方向の起こりやすい方向と逆に動かす」ことで、結果的に拘縮の予防となります。
また、肩甲上腕リズムを保つために必要な「前鋸筋(下部線維)」は、肩甲骨上方回旋の作用と共に「肩甲胸郭関節を安定させる」役割を持ち、肩の怪我予防にも重要です。
※前鋸筋と肩甲胸郭関節の詳細↓
前鋸筋は「オーバヘッド動作(逆立ちなど)」で鍛えることが可能ですが、拘縮が起こっている場合には「そもそもオーバヘッド動作が出来ない」ことが見られます。
先に挙げた「小胸筋」や「広背筋」の緊張のあまり、耳の横まで肩を挙げることが出来ず「可動域制限、肩の詰まり感、腰を反る代償動作」などが見られます。
代償動作が出ることで肩の怪我以外にも「腰の怪我」の原因にもなるので、
耳の横に付けてバンザイが出来ない→ストレッチやフォームローラーで対象筋の柔軟性を獲得する
将来的に肩の怪我をしたくない→オーバヘッドプレスをメニューに取り入れる
といった形で、自分の現段階に合わせて肩の怪我をしないための手段を選んで下さい。
オーバヘッドプレスと広背筋の関係↓
肩の怪我予防とオーバヘッドプレス まとめ
以上が「肩の怪我を防ぐオーバヘッドプレス」となります。
固まりやすい肩甲骨に動きを付けたり、オーバヘッド動作がうまく出来るかなどは、肩の痛み予防、改善に重要なヒントが隠されている種目と言えます。
冒頭でのオーバヘッドプレスの目的として、
・ベンチプレスの強化
と言いましたが、筆者の個人的な考えは「ベンチプレスを強くするのはベンチプレスをすることが良い」と考えています。
ただ、ベンチプレスの頻度が増えることで「肩関節の拘縮」の可能性が高まるのでオーバヘッドプレスの重要性が増します。
その他にも広背筋の柔軟性を改善するには「懸垂をフルレンジで行う」ことも、かなり重要なので、普段の懸垂の可動域を意識してみて下さい。
(フルレンジで行って出来る回数が減ることは全く問題ありません)
それでは今日はここまで!次回、お楽しみに!
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