今回はトレーニーに起こりやすい「胸郭出口症候群」について解説します。
胸郭出口症候群とは、「肩周りや腕〜手先のにかけての痛み、しびれ、だるさ」などの症状が主で、特徴的には「なで肩の女性」や「筋トレ愛好者」に多く見られます。
筋トレでは特に「ベンチプレスを高頻度」でやる方に多く、症状は放置すると悪化することがほとんどで注意が必要です。
胸郭出口症候群を知るために、
・胸郭出口症候群とは?
・ベンチプレスとの関係
・改善のためのストレッチとエクササイズ
の順で解説していきます。
胸郭出口症候群の原因
冒頭の通り、胸郭出口症候群になりやすいのは「なで肩の女性」や「ベンチを良くするトレーニー」です。
後に詳しく見ますが、共通点として「神経や血管が圧迫されやすい」状態になっており、圧迫されることで「肩周りや腕〜手先のにかけての痛み、しびれ、だるさ」などの症状が出ます。
圧迫される部位は3箇所あり、
①斜角筋隙
②肋鎖間隙
③小胸筋下間隙
に分かれ、それぞれの位置を見ていきます。
【①斜角筋隙】
前方:前斜角筋
後方:中斜角筋
底面:第一肋骨
圧迫される神経=腕神経叢(わんしんけいそう)
画像の通り、斜角筋と第一肋骨が三角形の形で、この間を神経と血管が通ります。
なで肩の場合は三角形の形が「より鋭角」になるので、神経の通り道が狭くなり圧迫されやすくなります。
【②肋鎖間隙】
上面:鎖骨
下面:第一肋骨
肋鎖間隙では、「鎖骨の下制」や「肋骨の挙上」でスペースが狭くなり、神経が圧迫されます。
鎖骨下制の例:胸を張る動き
肋骨挙上の例 :深呼吸
肋鎖間隙で圧迫されることを「肋鎖症候群」とも呼びます。
【③小胸筋下間隙】
小胸筋の下を神経や血管が通過します。
腕を挙げる動作では小胸筋間隙を支点として、神経と血管の走行が変わるので、腕を挙げた際に症状が出やすいのが特徴です。
胸郭出口症候群の原因となる3つの場所がわかったので、次に「ベンチプレスとの関係性」を見ていきます。
ベンチプレスと胸郭出口症候群の関係
ベンチプレスでは肩の怪我を防ぐために「胸を張る」ことが重要です。
胸を張る動きは「肩甲骨の下制や下方回旋」で行い、うまく張れると肩の位置が下がります。
ですが、肩の位置を下げる(肩甲骨下制、下方回旋)動きは、なで肩と同じような姿勢を作り「①斜角筋隙」が狭くなるリスクもあります。
さらに鎖骨も下制するので「②肋鎖間隙」も狭くなります。
次に筋肉の働きを見ると、肩甲骨の下方回旋には「③小胸筋」が関わります。
胸を張ると小胸筋の緊張状態は続き、「③小胸筋下間隙」も狭くなります。
改めて胸を張る動きは、
【骨格の動き】
・鎖骨の下制+肩甲骨の下制・下方回旋→なで肩の姿勢を作る→斜角筋隙と肋鎖間隙を狭くする
【筋の働き】
・肩甲骨の下制、下方回旋→小胸筋の緊張→小胸筋下間隙の圧迫
つまりベンチプレス自体に①②③全てを圧迫する要因があり、胸郭出口症候群のリスクを高めるとも言えます。
実際に胸郭出口症候群を調べる検査は何種類かありますが、再現性が低いためここでの紹介は避けます。
主な症状である、「肩周りや腕〜手先のにかけての痛み、しびれ、だるさ」ある場合は、真っ先に医療機関を受診してもらうことをおすすめします。
次に胸郭出口症候群の予防と症状緩和のために必要なリハビリを紹介していきます。
胸郭出口症候群の予防とリハビリ
リハビリ方法としてエクササイズとマッサージを紹介します。
【エクササイズ シュラッグ】
僧帽筋上部を鍛える種目として有名なシュラッグですが、胸郭出口症候群のリハビリにも有効です。
シュラッグの動きは、
・肩甲骨の挙上
・鎖骨の挙上
がメインで行われ、胸を張る動きと反対方向に肩甲骨と鎖骨が動きます。
反対方向に動かすことで動きの偏りを改善し、①斜角筋隙 ②肋鎖間隙 ②小胸筋下間隙のスペースが保たれます。
特にベンチプレスを高頻度で行う場合、「肩甲骨と鎖骨の動きの偏り」が見られるので、偏りを改善するための反対方向に動かす大切なエクササイズです。
やり方は、軽いダンベルを持ち肩甲骨を挙上させる(肩をすくめる)動きを反復して行います。
注意点は「高重量でやらない」ことです。
高重量でシュラッグを行うと、重さに引っ張られて「なで肩」の姿勢となります。
その場合、①②③すべてを圧迫する可能性があります。
20〜30回やっても余裕があるような重量設定にし、15回を2〜3セット
・ベンチプレス前のアップ
・ベンチプレス後のクールダウン
・日常的に動かす
など、様々な使い方で活用してもらえるとよ良いです。
【小胸筋マッサージ】
次に小胸筋下間隙を直接圧迫する原因である「小胸筋」のケアをします。
小胸筋の触り方は
①鎖骨を触り、鎖骨の下側に指を当てる
②鎖骨に沿って肩側に指を滑らす
③凹みがあるので、そこから更に肩側に指1本ずらす
④(③)の位置から指1本ずらした位置が小胸筋
小胸筋が触れると、人差し指、中指、薬指の3本で圧迫しながら円を描くようにマッサージします。
位置を左右や下にずらしながら60秒程行いましょう。
【胸鎖乳突筋のマッサージ】
最後に胸鎖乳突筋のマッサージもします。
斜角筋ではないのか?となりますが、斜角筋は触るのが難しい上に血管や神経に触れて嫌な感覚が残る場合があります。
斜角筋の動きが悪い場合は胸鎖乳突筋の動きが悪いことがほとんどなので、腕神経叢の圧迫を防ぐ上でも重要な「胸鎖乳突筋のマッサージ」を行います。
胸鎖乳突筋のマッサージ方法
(左を触る場合)
①首を右肩に近付けるように動かす
②胸鎖乳突筋を触る(首の横〜前にくっきりと浮かぶ筋)
③胸鎖乳突筋を掴み、円を描くように回す
ベンチプレスと胸郭出口症候群 まとめ
以上がベンチプレスと胸郭出口症候群の関係になります。
このような体の動きの偏りで起こりやすい症状は特に「予防」が大切です。
紹介しているエクササイズの他にも、
肩甲骨の柔軟性と安定性が良くなる4つのモビリティエクササイズ【ストレッチ】 - YouTube
【オーバーヘッドプレス】肩を強化し、体の連動を使うフォーム解説【バーベルショルダープレス】 - YouTube
↑これらのトレーニングを日常から行うことで、肩甲骨の偏りを防ぎながら体を強化することが出来ます。
今症状が出ている場合は、まず病院で確定診断を受けてください。
それでは今日はここまで!次回、お楽しみに!
この記事を読んだあなたにオススメ