前回は「手首を立てる」ことが、親指の付け根の痛みの原因になる!という理論と対策方法について書きました。
その解説の中で出てきた「手首を寝かせる」ことがもう1つ重要な役割を果たします。
それは、肩甲骨を寄せにくくするということです。
過去の記事でも言いましたが、ベンチプレスでは肩甲骨を寄せすぎてはいけません!
「肩甲骨を寄せる」といったキーワードは理解しやすく、指導者もよく使う場面が多いと思いますが、
「ベンチプレス」においてはそう指導してはならない!と筆者は考えています。
「肩甲骨を寄せること」が多くの「肩の怪我」の原因になりますので、寄せないフォームと、肩甲骨の動きについて解説していきます。
「ベンチプレスで肩甲骨を寄せてるのに肩を痛めた!」
といった方は、今回の記事を見てもらうことで、解決のきっかけになると思います!
- ベンチプレスで「肩甲骨を寄せる」ことで、肩の痛みにつながる理由1 肩の可動域
- ベンチプレスで「肩甲骨を寄せる」ことで、肩の痛みにつながる理由2 肩の構造
- ベンチプレスで「肩甲骨を寄せる」ことで怪我につながる理由3 脇が開く
- ベンチプレスにおける 肩甲骨の正しい使い方とフォーム まとめ
ベンチプレスで「肩甲骨を寄せる」ことで、肩の痛みにつながる理由1 肩の可動域
まずは「肩甲骨を寄せる=内転」「正しい肩甲骨の動き=下方回旋」を画像で見ます。
では、次に肩の動きを追加していきます!
腕を前から後ろにブンブン回していきましょう。
これを「肩甲骨内転」「肩甲骨下方回旋」の2つのパターンで行ってみます!
おそらく、後ろに回るときに「肩甲骨下方回旋」のほうが、動きが大きくスムーズに回せると思います。
次は、ベンチプレスの動作に応用して比較してみます。
ベンチプレスのスタートポジションをつくりましょう。
そこから肩甲骨の動きに従い肩の伸展動作を連動させます
「肩甲骨と肩関節の動きを連動させる」イメージがわかりにくい場合は、画像の数字を参考にしてみてください!
これは”時計の数字”を表しています。
「肩甲骨内転は、3時・9時方向に肩が連動」
「肩甲骨下方回旋は、4時・8時方向に肩が連動」
していきます。
この時に、どちらがスムーズに肩が後にいくか?と比較したとき、確実に「下方回旋」の方と思います。
横からも比較してみましょう。
この比較もやはり「下方回旋」のほうが、動きに余裕があり安定感もありそうです。
「内転」はこれより後ろに行くとかなり窮屈そうですね。
「下方回旋」は、ベンチプレスのバーが胸につく”ボトムポジション”に簡単につけれそうですが、「内転」は厳しい状態と言えます。
この状態のまま、ベンチプレスの重量が乗っかってくると、「動かない肩関節にベンチプレスが関節技をかけている」状態になります。
まともに肩に負担が掛かり、怪我の原因の1つとなります。
この「肩の可動域が悪くなること」が「肩甲骨を寄せてはいけない理由」の1つ目となります。
ベンチプレスで「肩甲骨を寄せる」ことで、肩の痛みにつながる理由2 肩の構造
次に、「肩甲骨を寄せる」ことによって起こる怪我の原因と、その場所について書いていきます。
肩の怪我が起きやすい場所については、こちらの記事をご覧ください!
上記記事にでてきた、ベンチプレスで最も怪我をしやすい
- 肩甲上腕関節
- 肩鎖関節
- 肩峰下関節
の3つの関節も「肩甲骨を寄せる」ことで、怪我のリスクが大きく上がります。
「肩甲骨内転」「肩甲骨下方回旋」の差を動画で見てみます。
*アプリの加減で、内転の方のみ肩関節屈曲しています。
少し見にくいかも知れませんが「内転」のほうには「3つの関節」に大きな負担の掛かりやすい状態になっています。
それに対して「下方回旋」は、「3つの関節」の位置関係が破綻することは無く、負担の少ない動きを可能としています。
更に、ベンチプレスのボトムポジションからの挙上の際には「肩関節内旋」といった動きが入ります。
この「肩関節内旋」は、「肩甲骨内転+肩関節伸展」の状態で行われると、肩峰下関節にある”肩峰下滑液包”といったクッションを潰す力と、「肩鎖関節に強い捻じれ」がかかります。
クッションが減ることにより、インナーマッスルが損傷し「肩関節の機能が低下」肩を上げるときに痛みが出たりと生活にも支障をきたす怪我にも繋がります。
「関節の構造を無視してしまうこと」が「肩甲骨を寄せてはいけない理由」の2つ目です。
ベンチプレスで「肩甲骨を寄せる」ことで怪我につながる理由3 脇が開く
ベンチプレスで「脇は開いてはいけない!」ということを聞いたことがある方は多いと思います。
ただ「肩甲骨内転」をしている限り、脇が閉じる日は来ません。
「肩甲骨内転」がなぜ、脇が開くことに繋がるか解説していきます。
肩甲骨の動きを見てきます。
緑丸で囲った、肩甲骨下角(下の尖った部分)に注目してください。
「内転」では、ほぼ位置の変化はありませんが、「下方回旋」ではしっかりと動いています。
この「肩甲骨の下角」が、広背筋や僧帽筋などの力により動くことで背中が安定します。
一度、脇を広げる動作を行ってみてください!
「内転」と「下方回旋」をしながら両方を試してみてください!
下方回旋のみの方が、脇が開きにくいはずです。
この理由はおもに2つあります
- 脇が開く際には、肩甲骨「上方回旋」「挙上」という反対の動きが入るため
- 「内転」では、背中の安定がなく動きの支点を肩に依存しやすい
といった理由になります。
そしてこの「脇が開く」状態は、上記で出てきた”可動域の悪化”・”関節構造の限界”につながっているので、「脇が開いてしまうこと」が「肩甲骨を寄せてはいけない理由」の3つめになります。
ベンチプレスにおける 肩甲骨の正しい使い方とフォーム まとめ
「内転」と「下方回旋」の差を知ってもらえると、もう「肩甲骨を寄せる」ことが怪我の元になる!とわかってもらえたと思います。
今一度確認として、
- 肩甲骨「下方回旋」できているか?
- 脇が開いていないか?
- 肩の可動域が窮屈ではないか?
といった肩の怪我の原因になりやすい3点を見直してみてください!