前回に引き続き「肩甲骨の機能不全から見る肩の怪我」について解説していきます。
前回の記事をまだ見られていない方は、先にこちらを読んでもらうとスムーズに内容が入ってきます。
肩の怪我の原因となる、肩甲骨の機能不全を
・内側型
・下部型
・上部型
の3つに分類しました。
その中で今回は「下部型」について解説していきます。
肩甲骨機能不全の「下部」に多く見られるのが、
・ディップスで肩が痛む
・腱板損傷や、肩インピンジメントがある
・胸が上手く張れない
といった方です。
では、
「肩甲骨下部の機能不全がなぜ起こるのか?」
「肩甲骨下部の機能不全を改善するトレーニング」
について見ていきましょう。
- 肩の怪我につながる「肩甲骨の機能不全」を見分ける検査方法
- 肩甲骨下角の機能不全が起こる理由
- 巻き肩を改善し、肩峰下腔のスペースを広げる ”小胸筋アプローチ”
- インピンジメントを解消する ”肩に優しい腱板トレーニング”
- 肩甲骨と肩のインピンジメント・巻き肩 まとめ
肩の怪我につながる「肩甲骨の機能不全」を見分ける検査方法
前回と同様「ハンズオンヒップポジション」で検査します。
検査方法としては「腰に手を当てる」だけです。
注意点としては、「親指を腰側」に当てます。
こうすることで、
肩が内旋・外転位となり肩甲骨が浮きやすくなります。
そして、チェックする項目は、
・肩甲骨の浮きがある場所
を見ます。
浮いてくる部分を下の画像と照らし合わせます。
上記画像の筆者は「右肩甲骨の下角の浮き」が強いので、「右の下部型」が疑わしいです・・
肩甲骨下角の機能不全が起こる理由
まずは、肩甲骨下角が浮いた状態について見ていきます。
肩甲骨の下角が浮くことで、「肩甲骨の前方傾斜」が強くなります。
「肩甲骨の前方傾斜」をもう少し詳しく見てみましょう。
正常な肩甲骨は、すこし前に倒れている状態で自然な前方傾斜があります。
ですが、肩甲骨の下角が浮くことにより前方傾斜を強め、正常な肩甲骨の位置ではなくなります。
「前方傾斜」が強くなると、
・姿勢不良
・肩峰下腔が狭くなる
といったデメリットがあります。
この「肩峰下腔」の下には「腱板」や「滑液包」が通過し、狭い状態で繰り返し動かすことで「肩峰下インピンジメント」の原因になります。
前方傾斜が強くなる原因として多いのが、
・腱板の筋力低下や機能障害
・小胸筋が硬くなっている
ことが多く見られます。
では、
・腱板を効率よく鍛える方法
・小胸筋の柔軟性を改善する方法
について見ていきましょう。
巻き肩を改善し、肩峰下腔のスペースを広げる ”小胸筋アプローチ”
まずは、肩峰下腔を狭くし、巻き肩の原因にもなる「小胸筋」について見ていきましょう。
「小胸筋」は、肩甲骨の烏口突起から始まり、肋骨に付着します。
小胸筋の上に被さるように、大胸筋がついているので、なかなか意識すること無いと思います。
ですが、
・トレーニングや投球動作で、上手く胸が張れない
・肩の怪我をしたことがある
といった方は、ほぼ例外なく
小胸筋の動きが悪い状態になっています
ネットやYouTubeで、
「小胸筋 ストレッチ」などと検索すると様々な方法がでてきますが、肩に負担の大きそうなポジションでのストレッチが多く見られます。
肩を痛めている方は、満足に出来ない可能性が高いです。
なので「肩に負担の少ない小胸筋へのアプローチ」を紹介していきます。
まず用意するものは「テニスボール」です。
*硬さの目安がテニスボールなだけで、球体のある程度硬さがあれば何でも大丈夫です。
「小胸筋」の位置を確認します。
烏口突起に触れると、気持ち悪い感覚があり、強く押すと痛いので気をつけてください。
このような形で「小胸筋」に圧迫のアプローチを加えます。
更に、体重を乗せた状態で、揺らすことで幅広く刺激を与えることが出来ます。
余裕のある方は、
圧迫をかけながら、地面についている手を離し、肩を色々な方向に動かしてあげてください。
30秒を2セット行いましょう。
行ったあとに、
・胸を張る
・肩を動かす
などをして、アプローチ前の感覚と比較してみてください。
インピンジメントを解消する ”肩に優しい腱板トレーニング”
「小胸筋」にアプローチをすることで、「肩峰下腔」にスペースが生まれます。
次は「肩峰下腔」を通る、”弱った腱板”に対してアプローチしていきます。
押さえておきたいポイントが、
「腱板トレーニングは肩甲骨面上で行う」ことです。
先に「肩甲骨面上」の説明をします。
体の真横に肩を挙げる「肩の外転面」に対し、「肩甲骨面」は、それよりも30°程度前になります。
この「肩甲骨面」で動作を行うことで、
肩関節が最も安定し、インピンジメントを防ぎながら腱板のトレーニングを行うことが出来ます。
では、やり方を見ていきましょう。
①強度の弱いチューブを手首に巻き、軽いダンベルを持ちます(1~2kg)
②肩は軽度外旋位(親指上向き)
③肩甲骨面上で挙上(屈曲50~60°)
棘上筋を集中して鍛える場合は、屈曲45°で止めます。
解説では、「広くなった肩峰下腔」で動かすのも目的としてあるので、可動域を少し広めに取っています。
このエクササイズのメリットは、
・チューブを引き合うことで、肩を安定させるようと腱板(インナーマッスル)が働く
・三角筋があまり関与しない角度で動かすため、棘上筋を上手く刺激できる
・肩甲骨面上で動かすため、関節にも優しくトレーニングができる。
といった多くのメリットがあります。
15回を2~3セットおこないましょう。
肩甲骨と肩のインピンジメント・巻き肩 まとめ
以上が「肩甲骨下部の機能不全による肩の怪我」についてです。
筆者も昔、硬式野球をしておりその当時「腱板損傷」があり、現在もトレーニングはしているものの、腱板の弱さは見られます。
「腱板損傷」は、子供の頃の怪我であっても、肩甲骨の機能不全という形で大人になっても影響が出やすいものです。
なので、昔スポーツで肩を痛めた人や、現在トレーニングで痛めている方には、必須のエクササイズとアプローチになります。
地味で面倒だとはおもいますが、「将来肩が上がらなくなる」ことを考えると、今のうちにしっかりとトレーニングを積むことが大切です。
それでは今日はここまで!次回、おたのしみに!