今回はトレーニングにおける「股関節の連動、力を使うための3つのドライブ」について書いていきます。
トレーニングを続けている方は「フリーウエイトの種目(BIG3)と、マシンの種目どちらがオススメですか?」と聞かれることも少なくないと思います。
どちらも互いにメリットはあります。
1例としてですが、フリーウエイト種目とマシン種目の大きな違いとしては「3つのドライブを動作で使うか」が挙げられます。
3つのドライブとは、
・スクワットでは「ヒップドライブ」
・ベンチプレスでは「レッグドライブ」
・オーバーヘッドプレスでは「トルソードライブ」
といったように、下半身(股関節の大筋群)の力を連動させ、挙上に使う方法です。
このドライブを使えることは「体を上手く使えるようになる」といっても過言ではありません。
・3つのドライブを使うことでどのようなメリットがあるのか?
・3つのドライブを使う練習方法
について見ていきましょう。
股関節、下肢の力を伝える「3つのドライブ」とは?
3つのドライブに対してイメージをつけるため、先に画像で見ています。
ピンクの矢印が「各ドライブ」によって力の加わる方向になります。
ヒップドライブでは、お尻を上に上げるような意識で下肢の力を伝える。
レッグドライブでは、バーの挙上方向に下肢(足)の力を加える。
トルソードライブでは、股関節の前後移動の力をバーの挙上に加え、軌道を正す。
股関節の動きを中心として大きな筋群(殿筋など)を動作中に使います。
そして「3つのドライブ」に共通することは全て
「ボトムポジション〜挙上で最大の力を発揮する」ことです。
「ボトムポジションは最も怪我の起こりやすい場所」でもあります。
・スクワットでは、グッドモーニングで腰を痛めやすい
・ベンチプレスでは、肩に過度の負担が掛かりやすい
・オーバーヘッドプレスでは、腰椎に過伸展が起こり腰痛の原因に
など様々な障害のリスクがボトムポジションにはあります。
ボトムポジションを効率よく乗り越えるのが「3つのドライブの役目」ですが、感覚を掴めないことには上手く使うことができません。
今から「3つのドライブの練習方法」を紹介します。
3つのドライブの練習方法
今回紹介する練習方法は「初歩的」なものです。
ですが、初歩的な練習と少しのコツを掴むことで、動作の安定感が増し、怪我の原因を減らすことになります。
では、スクワット(ヒップドライブ)から見ていきましょう。
スクワット「ヒップドライブ」のやり方とコツ
スクワットは「股関節屈曲」「膝関節屈曲」がボトムポジションの姿勢で、
「屈曲→伸展」を行うことでボトムポジションから立ち上がります。
股関節の伸展は「ハムストリングス、殿筋群、内転筋郡」を中心に
膝関節の伸展は「大腿四頭筋」を中心に行います。
「ヒップドライブ」は体の後面にある股関節伸筋群(ハムストリングス、殿筋群、内転筋群)を最大限活用し、ボトムポジションを乗り越える方法です。
では、練習方法を見ていきましょう。
1人で行う「チューブヒップドライブ」
ある程度長さのあるチューブを円状にくくり「足裏」「腰の下側(骨盤の骨の上のライン)」に引っ掛けたまま、スクワットのボトムポジションになるようにしゃがみます。
*チューブの長さを考慮し、外れない場所までしゃがむ。
その状態から「お尻を真上(ヒップドライブ)」に挙げます。
ここで注意点が、お尻のみ上がるのではなく「胸を少し張る」イメージで上体の角度をキープしながらボトムポジションを超えます。
ヒップドライブの練習とは少し離れますが、他にも意識しておきたいポイントが
・しっかり膝が外に開きながらしゃがめているか(股関節頸部軸屈曲)
・足裏(母趾球、小趾球、かかと)が接地し、地面を踏み込めているか
この2点を意識してみて下さい。
なかなか感覚が掴めない方は「母趾球で地面を裂き、しゃがむ」といったイメージを持ってもらうと良いです。
2人で行う「ヒップドライブ」
次にパートナーがいる場合の方法です。
パートナーに「骨盤の少し上」押さえてもらいます。
わかりにくい場合は「ベルトを巻く位置とお尻の間」くらいのイメージで構いません。
先程と同じように「スクワットのボトムポジション」までしゃがみます。
パートナーは押さえた部分を上から下に抵抗をかけます。
押さえられた力に抵抗するように「お尻を真上(ヒップドライブ)」にあげます。
注意点は先程と同じです。
上から抑える力は、相手が「軽い抵抗を感じる程度」で構いません。
あまりに強いと動作自体が乱れます。
このように「ヒップドライブ」の感覚を掴むことで、股関節周囲筋を上手く使うことが可能になります。
ベンチプレス「レッグドライブ」のやり方とコツ
「ベンチプレスで足の力を利用する」ことは未だに「卑怯だ」などと言われたりしますが、足の力を上手く使わないことが、多くの怪我のリスクをあげます。
レッグドライブを上手く使える足のポジション(踏ん張れる位置)を取っていること自体が、ベンチプレス動作の安定に繋がり、肩の怪我などを防ぎます。
ですが、レッグドライブで少し勘違いされやすいのが「蹴る力を加える方向」です。
ベンチプレスで腰を痛める方にも多いのですが「お尻を真上にあげている」ことがレッグドライブの失敗例となり、腰、肩の痛みの原因になります。
この辺りは動画で詳しく解説しているので是非見て下さい。
2人で行う「レッグドライブ」練習方法
動画では1人で出来る練習方法を紹介しましたが、次は2人での練習方法です。
2人で行う方法は、
・レッグドライブの蹴る方向がいまいちわからない
・ボトムポジションから挙上イメージがつかない
といった方は特にオススメです。
まずは、ベンチプレスのボトムポジションを作ります。
パートナーは「膝」に手を当てます。
そして、
「挙上の合図と共にパートナーは膝を頭側に真っ直ぐ押します」
軽く押し、レッグドライブの方向とボトムポジションからの意識付けをサポートします。
ベンチプレスで肩、腰の怪我を防ぐ上で「レッグドライブ」はとても重要ですが、あまり「蹴る!蹴る!」という意識を持つこともよくないので「正しい足の位置でセッティングすると勝手にレッグドライブが使える」とイメージを持ってもらうと良いです。
オーバーヘッドプレス「トルソードライブ」のやり方とコツ
スクワットの「ヒップドライブ」や、ベンチプレスの「レッグドライブ」はなんとなく聞いたことがあっても「トルソードライブ」を聞いたことがある方は少ないと思います。
「ドライブ」とあって股関節や下肢の力を伝えることに変わりは無いのですが、非常に難しい技術になります。
*筆者もかなり苦戦しています。
この難しさの原因は、スクワットやベンチプレスは「スタートポジション→ボトムポジション」になりますが、オーバーヘッドプレスは「スタートポジション=ボトムポジション」であるからと考えています。
練習方法の前にトルソードライブの役割を見ていきます。
トルソードライブの役割とポジショニング
まずは「トルソードライブを使うためのポジショニング」を見ていきます。
左側:直立
右側:トルソードライブのポジション
「左側」は、直立で真っ直ぐ上にバーを挙上しようとすると、顎に当たり挙上負荷です。
「右側」は、バーを真っ直ぐに挙上するために「股関節伸展・胸椎伸展」を行いバーが真上に上がっても顎に当たらない姿勢を作っています。
この姿勢がトルソードライブを使うためのポジションであり、バーの軌道を直線にする方法です。
次に「オーバーヘッドプレスの一連の流れとトルソードライブ」を見てみます。
左から一連の挙上動作になります。
スタートポジションから挙上し、バーは顔スレスレを通ります。
次に、一番右のバーが顔の前を通過したときに「体はバーの下に潜り込む」動きを取ります。
「体がバーの下に潜り込む動き」を、
・頭の前後移動
・体幹部の前後移動
のみで行うと、バーの挙上が乱れたり腰部に大きな負担がかかります。
では「どのようにバーの下に潜り込む?」かというと、
「伸展していた股関節を直立に戻す、股関節の前後移動」を行います。
この「股関節の前後移動」を「トルソードライブ」といい、バーの挙上を大きく手助けします。
更に詳しく「トルソードライブを行うポジションの作り方」を知りたい方は、こちらの記事を参考にして下さい。
トルソードライブの練習方法
トルソードライブの練習のポイントは「股関節伸展をどれだけ上手く出来るか?」になります。
「股関節の伸展」の練習方法は、画像の通り「骨盤の上を手で前に押し出す」だけです。
「股関節の伸展をどれだけ上手く出来るか?」と言いましたが、股関節の伸展の動きが難しいのでは無く、その姿勢を正しく保持するのが難しいポイントです。
その理由として「股関節の伸展」+赤字の「胸椎伸展+膝伸展位保持」が求められます。
赤字の2つを行うために
・腹筋に力を入れながら(腰痛伸展を予防)胸椎伸展させる
・膝が曲がらないように大腿四頭筋に力を入れる
・足裏の荷重が偏らないように、地面を足裏全体で踏む
最低限これらを達成しながら、股関節伸展をさせ挙上動作に入ります。
複雑な動きになるので、初めは股関節伸展を手で行うことで。他の動きに注意を向けることが可能なので、練習の初期段階はこの方法がおすすめです。
腹筋に力を入れながら胸椎の伸展が難しい方は「腹筋に力を入れてラットプルダウン」を練習してもらうと良いです。
「ヒップドライブ・レッグドライブ・トルソードライブ」練習方法 まとめ
以上が「3つのドライブの練習方法」になります。
3つのドライブが出来ると、
・動作中の安定が増し、怪我のリスクが下がる
・体の連動がよくなり股関節の大筋群を上手く使える
・ 自分の体の動きが悪い場所を見つけやすくなる
といった大きなメリットがあるので、どんどん練習しましょう。
3つのドライブに共通する「失敗例での腰の負担」についてのケア方法などは、こちらの記事を参考にしてみて下さい。