今回はスクワットの「手首の痛み」と「バーの握り方」についてです。
ベンチプレス同様、スクワットで「手首が痛い!」という悩みはよく聞きます。
「手首の痛み」の基本的な解決方法は4つあります。
1 バーを担ぐ際の「握り方」を変える
2 「肩関節」の柔軟性を上げる
3「手幅」と「肘」の角度で、背中で上手く受ける
4 バーを担ぐ際の「肩甲骨」の使い方を意識する
この4点を修正することで、かなりの確率で「手首の痛み」は解消されます。
今回ご紹介する1番の、
バーの「持ち方・握り方」を変えるだけでも、痛みが解消される可能性は高いので是非一度お試しください!
スクワットで「手首に痛み」が起きる3つの原因
まずは「手首の痛み」につながる原因を3つ上げていきます。
・バーを握る際に、手のひらの安定する”面”で握れていない
・背中で上手く担げず、スクワット動作中にバーが後ろに転がる
・最適な手幅で握れていない
大きく分けてこの3つがあります。
下2つは、他の「関節」や「筋肉」の要素の影響が大きいのですが、1番上の「バーを握る際に、手のひらの安定する”面”で握れていない」ということについて、主に解説をしていきます。
*下2つは今後解説予定。
「バーを握る際に、手のひらの安定する”面”で握れていない」と言いましたが、これはベンチプレスでも同様です。
ベンチプレスでもバーベル の乗る位置がずれると、「手首に痛み」が伴います。
*過去にも「ベンチプレスの手首の痛み」編でも詳しく書いています。
こちらも読んでいただくと参考になると思います。
そして、 言い方を変えると「手首の痛み」がある方は「必ず痛みが出る場所で握ってしまっている」ともいえます。
まず、「痛みが出ない握り方」と「痛みが出る握り方」を比較してみましょう。
この握り方の大きな違いは
- 手の面積の「一番広い所」で受けているか?
- 関節の構造的に痛みが出にくい「骨の軸」で重量を支えているか?
という2点です。
「手の面積の広い所」で握るメリットとして
- 重量に対しての安定感が増す
- バーが手の中で遊ばない
があり、特に「手首の痛み」に関しては「バーが手の中で遊ばない」といったことが重要になります。
「バーが遊ぶ」ということは、
- 背中に上手く乗せれていない
- 手のひらの安定する面で支えていない
のどちらかです。
理由はシンプルで、バーと接地している面が『背中』と『手』しかないからです。
では「安定する面」で支えると「遊ばない理由」を『構造』と共に見ていきます。
「構造」と「握り方」から見るスクワットでの”バーの遊び”
まず重要なことが、スクワットのときには「常に手首が背屈している」ということです。
このことを踏まえ、「安定する握り」と「不安定に握り」を比較します。
まずは「手首の骨格」に対する、重量を受けた際の「手首の負担」です。
「握りの位置」が変わるだけで、大きく「手首背屈時の負担」がかわります。
これは、さまざまな種目でも同じことが言えるので、注意したいポイントですね。
次に、スクワットに応用したものです。
スタートポジションまでは、そこまで大差は出ません。
問題は最も背屈が強くなる「動作はじめ・ボトム〜切り返し」の場面です。
ここで「不安定な握り」の場合は、「手の中で(背屈方向に)バーが遊び」重さを「骨の軸」で受けることができなくなります。
一度、手の中でバーが遊ぶと、元の良い位置に戻すことは「ほぼ不可能」です。
そして、そのまま動作を繰り返すことで「手首の痛み」に繋がります。
このような理由があり「手首の痛みの原因」に対して「安定した面積で支えること」が大切になります。
次は「実際に使える2種類のグリップ(握り方)」について紹介します。
おそらく名前は聞いたことはあると思いますが、「最大限メリットを活かすためのグリップの本質」を解説していきますので、是非ご覧ください!
「手首の痛み」を防ぐ握り方”サムアラウンドグリップ”
おそらく、多くの人がスクワットのグリップに採用している「サムアラウンドグリップ」を紹介していきます。
*「サムアラウンド」とは、バーに親指を「かける」といった意味です。
次に紹介する「サムレス」はバーに親指を「かけない」グリップです。
「サムアラウンドグリップ」の重要なポイント
- 動作中に安定するように、「逆算」してセッティング
- 骨の軸で「バーを押し込む感覚」を身につける
- 手首の安定する位置で持ち、「バーを遊ばせない」
では、それぞれ解説していきましょう!
1. 動作中に安定するように「逆算」してセッティング
これは、すごく重要なポイントです!
先程も言いましたが「バーが遊びやすいタイミングは、動作はじめ・ボトム〜切り返し」が最も多いです。
なのでここで「手首の状態を最善」にする必要があります。
そしてそのために必要なことが「逆八の字で握る」ということです。
「逆八の字」と「真っ直ぐ握る」例を見ます。
ここは、基本的には、”ベンチプレス”と同じになります。
次に、これを”スクワットの担ぎ”に応用して「安定した逆八の字握り〜セッティングの流れ」を見てみましょう。
①まずはしっかり「逆八の字」で握ります。
②そこからバーの下に潜り込みます。
③バーが頭を超え、担ぎ位置の真下に入ります。
④バーを背中の「担ぎ位置」にセットします。
ここで大事なポイントが「握った状態」から、バーの下に潜り込んで、「背中に担ぐ時には、肩は外旋位」となる。ということです。
③と④を比較してもらうと、「肘の位置」が大きく変わりましたね。
この「背中をタイト」に硬め、「担ぎを安定」させる動作の1つが「肩関節外旋」になります。
そして、この「肩関節外旋」動作で「真っ直ぐ握り」をしている場合は、指の方にバーが転がりやすく、バーが手の中で遊ぶと「手首の痛み」に繋がります。
⑤顔を上げ「担ぎのセッティング」を完成させる
以上が「セッティング」の流れになります。
①のときに「逆八の字」で握っていると、⑤のセッティング完了の段階で「手のひらの安定した広い面」で握ることができます。
しかし、「不安定な握り」のように、①の「セッティングの始まり」の段階で「真っ直ぐ」握ってしまうと、バーの下に潜りこんで、背中に担ぐ時には、「肩の外旋」の影響で、「手首の不安定な位置に強い背屈位」で乗ってしまいます。
このまま動作を続けると、ボトム(切り返し)でより強い負荷が手首にかかり痛みが出る原因となるので要注意です。
2. 手のひらの安定した面(骨の軸)でバーを押し込む
「手のひらの安定した面」とは、「前腕の骨の軸上」になります。
その「骨軸」で、しっかりとピンク方向に押し込みます。
そしてバーの重量を使って「バーを背中に埋め込む」ことで、担ぎの安定感が増します。
更に、うまく「骨軸」で押し込めると、赤丸の部分のように、バーが少し浮きます。
軽く浮かすことが出来る感覚があれば、しっかり「ハマっている・押せている」証拠です!
3. バーを遊ばせない
これは「ベンチプレス」の記事でもありましたが、手をグッと握り込んで力を入れると、手の母指球と小指球に「膨らみ」が出来ます。
この「膨らみ」が、手の安定した場所を潰し、指の方へバーを流そうとします。
そうなると、バーの握る位置は「不安定な位置」になり、「背屈ストレス」で手首を痛める原因となります。
なので、「強く握り込まない」ということが「手首の安定」に重要となります。
以上がサムアラウンドグリップの注意点となります。
「セッティング」で全て大事なポイントが集約されているので、しっかりと意識してみてください!
「手首の痛み」を劇的に改善する”サムレスグリップ”
先程とは違って「親指を外す」グリップとなります。
実は、筆者は「手首の痛み」のある方には、こちらを強くお勧めします。
強くお勧めする3つの理由があります。
- 手の「最も安定」した位置でバーを支持できる
- 肩の柔軟性が低くとも、手幅を狭めやすく安定感が増す
- 背中との連動が上がる
という3点です。
そして重要なポイントも3点あります。
- 安定した面で支持するための手の向き
- バーの押し込む方向
- 握る指の力の入り方
になります。
こちらも「セッティング」がメインのポイントとなりますね。
3つのお勧め理由とポイントをともに解説していきます!
1. 「手の最も安定した面」と「安定するための手の向き」
さて、「面」と「手の向き」というキーワードが出てきました。
・・・
『どうせ、逆八の字でしょ!!』
と察する方は多いと思います!!
・・・
実は、違います!!
「サムレスグリップ」は「八の字」で握ります。
理由と共に画像を見ていきましょう!
散々今まで「手のひらの安定する面」は 赤線部分といってきました。
ただそれは「親指」がある場合です。
今回は「親指」を掛けないので、面積の広い、水色部分の方が圧倒的に「安定感」が増します。
よく「ベンチプレス」でサムレスの方を見ますが、この「安定感」と「安定することでの出力増加」の理由が多いと思います。
*筆者は怪我の危険性があるので「ベンチプレス」でのサムレスは推奨しません。
2. 「肩の柔軟性と手幅」と「バーの押し込む方向」
まずは「柔軟性」と「手幅」について見ていきましょう。
肩の動きが硬い人は、スクワットの担ぎで、「肩の前面に痛み」がでたりします。
かといって、あまり手幅を広げると「安定感」も失われやすくなります。
そんな悩みを解決するのが「サムレスグリップ」です。
その大きな理由が「八の字でスタートすることで、肩関節外旋位から担ぎが始まる」ということです。
*「サムアラウンド」では握ったときは「肩内旋位」で始まりとなります。
では「サムレス」と「サムアラウンド」どれだけ「手幅」が変化するのでしょうか?
基準線は、赤丸の「線」を参考にしてみてください!
多くの方が、例のように「指1本〜1本半」くらい狭くすることができます!
次に「セッティングの流れ」をみていきましょう!
①「八の字」で持ちます
②バーの下をくくります
③担ぐ背中の位置の真下に入ります。
④セッティング完了
注目は①〜④の「手のひらの面」が常に一定であることです。
これが「手首」「肩」に負担の掛からない「サムレスグリップ」の大きなメリットの1つです。
「バーの押し込む方向」は「サムアラウンド」と同じになります。
3.「握る指の力の入り方」と「背中の連動」
トレーニングをされている皆さんは、一度は「背中のトレーニングは小指から引け!」 と聞いたことがあると思います。
これには、「神経の要素」や「骨格的な要素」など色々とありますが、実は「スクワットにも応用」できます 。
「背中に力を入れる」のは、スクワットの「動作の安定」において非常に大きな役割を持ちます。
なぜ「サムレスグリップ」が「背中との連動」に繋がるのか見てみましょう。
大きく3つの理由があります。
①「肩外旋位」からのスタート
背中の力を入れるには、「肩甲骨」を動かす必要があります。
そして、背中を固めるには「広背筋」に力を入れます。
はじめから「肩外旋位」であることにより、「肩甲骨」が動かしやすく「広背筋」に力を入れやすくもなります。
②「八の字」の傾斜
手首を「八の字」にすることは「手のひらの安定した面」で支えるだけでは無く、「手の向きに傾斜」がつくことにより「小指球側」に重さの重心が乗ります。
この「小指球側の重心位置」は、「肩甲骨下方回旋」を容易にさせてくれます。
一度担いでいるイメージで、「小指球側に重心」と「母子球側に重心」で「肩甲骨下方回旋」をしてみてください。
おそらく「小指球側」が「肩甲骨下方回旋」しやすいと思います。
この「連動」も背中に力を入れやすく、「動作の安定」に大事な要因です。
③指の力の入り方
画像の下の赤丸を見てもらうとわかります 。
「小指球側」に重心位置があることで、自然と「小指」「環指」に力が入り、そこを中心に握ります。
ここで冒頭で話した「背中のトレーニングは小指から引け!」の原理が用いられます。
この原理の「神経」や「骨格」も要因から背中に力が入りやすくなります。
以上が「サムレスグリップ」の紹介となります。
「手首の痛み」と「握り方」 まとめ
ここまで「手首の痛みの原理」から始まり、「サムアラウンドグリップ」「サムレスグリップ」についてみてきました。
どちらを選択されるかは、もちろん自分自身の自由です。
ただ、かならず覚えていてほしい点が
動作に入る前の「セッティング」が重要であるということです。
そこを理解してもらえると、大きな怪我は防ぐことができると思います。
もし不明な点がありましたら、「コメント」でも「TwitterのDM」でもいいので、お気軽に聞いてくださいね!
最後に「ベンチプレス編」ではありますが、「手首のケア」について書いた記事を貼っておきます。
手首にトラブルのある方は、一度目を通して実施してもらうことで、回復が早くなったり、関節の動きがよくなると思うので是非お試しください!
それでは今日はここまで〜 次回、【スクワット】バーを担ぐと”肩が痛い”!3つの原因とストレッチ方法とは?お楽しみに!