今回は「体の歪みや、左右差」について書いていきます。
まず大前提として、
人間誰しもが「体の左右差、歪み、捻れ」が存在します。
その理由は、
・対になっていない内臓(肝臓など)
・生まれつきの筋肉、骨の差
・日常生活での「利き手」「利き足」「スポーツ歴」
これらが影響しているからです。
普通に生活している分には「左右差が致命的になる」ことは少ないですが、
ウエイトトレーニングなど、重量物を使って運動をする場合は少し話は変わってきます。
もちろん「内臓」などの影響はどうすることも出来ませんが、
「クセによる左右差」はなるべく解消した方が良く、トレーニング中のケガを防ぐ上で、とても重要になります。
左右差の中でも今回は「上半身」に注目し、特に
「胸郭の動き、横隔膜、腹筋の機能」からみた「左右差の改善方法」を紹介していきます。
- 体の歪みの原因になる「日常生活」と「スポーツ歴」
- 肋骨、横隔膜、胸椎から見る「体の歪みと左右差」
- 日常生活の「立ち方のクセ」から見るトレーニングの影響
- トレーニングに影響を与える「体の歪みと腹筋の弱さ」の関係
- 体の歪みを改善する「腹筋群のエクササイズ」
- 肩、肩甲骨の動きが良くなる「胸椎回旋エクササイズ」
- 胸郭から見る「体の歪みと左右差」の改善方法 まとめ
体の歪みの原因になる「日常生活」と「スポーツ歴」
「体の歪み」というと、世間では
・骨盤がズレている?
・鏡を見ると肩の高さが違う
など「わかりやすい表現」を切り取り、「矯正」という言葉でいとも簡単に治るように言われますが、「体の歪み」はそう簡単には治らないと考えています。
なかなか治らない「体の歪み」の原因となっていることが「日常生活」や「スポーツ歴」が大きく関連しています。
スポーツでは、片側に回転する「スイング動作、投球動作」を行う、「野球、ゴルフ、バレー、やり投げ」など、基本的に「一方向」にしか回転しない種目で「体の左右差」は生まれやすくなります。
ただ、スポーツにおいては「左右差」を改善しないほうが、パフォーマンスが高くなる可能性もあるので、「絶対に治すべき」とは言えませんが、
日常生活や、ウエイトトレーニングを楽しむ上での左右差は「限りなく無い方が良い」と考えています。
その中でも、日常生活で「クセ」として付きやすい左右差は「立ち方」になります。
いわゆる「両足に均等に体重を乗せて立つ」ことを、普段から「無意識」で行っている人はほとんどいないと思います。
思い返してもらうと、電車を待っている時など「無意識」で立っている姿勢は「いつも同じ方(片側)に重心が寄っている」ことがほとんどだと思います。
重心以外にも、
・首:右に倒れるが、視界をまっすぐに保つために、無理やり左に倒す
・肩:右が下がり、前に出る
・骨盤:右後傾、左前傾で、右に捻っている
・股関節:左外転、外旋位
・脊柱:姿勢による傾きと捻れ(胸椎は左回旋、肋骨の回旋のズレ)
などなど、簡単に体の位置について書きましたが、
「クセによる体の負担」は、ウエイトトレーニングのように「大きな負荷を単発的に」ではなく、日常生活での「軽い負荷を継続的に」行っていることになります。
「無意識=クセ」と考えると、ずっと同じ負荷が片側だけにかかり続けた結果、「体の左右差」に繋がることは、簡単に想像できると思います。
※足を組む際に、上にくる足がいつも同じであることも
全てについては書ききれないので、今回は冒頭でも言った
「胸郭の動き、横隔膜、腹筋の機能」からみた「左右差の改善方法」
について詳しく見ていきます。
肋骨、横隔膜、胸椎から見る「体の歪みと左右差」
まずは、体の構造について見ていきます。
「胸郭」は、「胸骨、胸椎、肋骨」で構成され、心臓や肺を囲っており、胸郭の下には「横隔膜」がついています。
胸郭と、横隔膜の動きは「呼吸」との関わりが深く、
・肋骨:回旋運動(内旋、外旋)、ポンプハンドル、バケツハンドル
・横隔膜:息を吸うことで「下降」、息を吐くことで「上昇」
・胸椎:回旋、屈曲、伸展で「肋骨の動きと連動」
呼吸によって、これらの動きが見られます。
では、各々の動きと「姿勢との関連」について見ていきます。
肋骨の回旋運動
肋骨の「ポンプハンドル」「バケツハンドル」
このような形で、肋骨は
息を吸う=各方向に開きながら「外旋」する
息を吐く=各方向から閉じながら「内旋」する
特徴を持ちます。
次に「横隔膜の運動」です。
ここまでをまとめると、
息を吸う=肋骨が開きながら「外旋」し、横隔膜が下がる
息を吐く=肋骨が閉じながら「内旋」し、横隔膜が上がる
となります。
最後に「胸椎の運動」です。
今まで見てきた「呼吸、肋骨、横隔膜の動き」+「胸椎の動き」を付け加えると「胸郭の動き」になります。
「呼吸、体の位置による胸郭の動き」をパターンでまとめると、
【息を吸う】=「肋骨外旋」+「横隔膜下がる」+「胸椎の伸展」
【息を吐く】=「肋骨内旋」+「横隔膜上がる」+「胸椎の屈曲」
【胸椎の回旋】=回旋方向の肋骨の外旋、反対側は内旋
このように、大まかに分類することが可能です。
胸郭の動きがわかりにくい方は「大きく深呼吸+最後まで息を吐き切る」ことをしてみてください。
息を吸うことで「肋骨の広がり、回旋、体が伸びる(胸椎伸展)の感覚」や、
息を吐き切ると「肋骨が閉じる、回旋、体が丸くなる(胸椎屈曲)」を体感してもらえると思います。
今見ていった「胸郭の動き」と「日常生活の立ち方のクセ」で起こる、体の歪みの原因を詳しく見ていきます。
日常生活の「立ち方のクセ」から見るトレーニングの影響
では、初めに見た「立ち方」の画像をもう一度見て見ましょう。
緑線と文字が「胸郭の動き」になります。
これを先程の動きと当てはめてみましょう。
※ここでの「胸椎の屈曲、伸展」は肋椎関節部の小さな動きです。
改めて見直すことで、
「日常生活の立ち方のクセ」が、自然に「体の歪み、左右差」に繋がることがわかると思います。
上記のような「体の歪み」は「胸郭の動き」から考えると
右半身:息を吐きやすく、吸いにくい
左半身:息を吸いやすく、吐きにくい
といったことが起こりやすくなります。
トレーニングに置き換えると、
・スクワットで「体を捻りながらしゃがむ」癖がある。
・ベンチプレスで「アーチを作ると、胸の高さが違う」
・バルサルバ呼吸での、腹圧の高まりに左右差が出る
なども、「胸郭の動き」が原因である可能性も考えられます。
そして「体の歪み」によって「胸郭に関わる筋群」も様々な影響を受けるので、それを見ていきます。
トレーニングに影響を与える「体の歪みと腹筋の弱さ」の関係
呼吸に関わる筋肉を挙げるとキリがないので、
・横隔膜の周囲にある「腹横筋」「大腰筋」「腰方形筋」
・呼吸と肋骨に重要な関係である「内腹斜筋」「腹横筋」
を見ていきます。
これからの筋群は体を安定させる役割をもたせますが、今回、特に注目してもらいたいのが、「腹横筋」「内腹斜筋」で、この2つの筋肉は「肋骨を内旋」させる働きを持つからです。
そして「腹横筋」「内腹斜筋」は、「筋力、柔軟性」の差が出やすくなります。
この左右差を取り除くためには、
右:「肋骨外旋可動域を上げる」「胸椎伸展、右回旋可動域をあげる」
左:「肋骨内旋筋に刺激を入れる」
これらが、胸郭から見た「体の歪み」を改善する方法になります。
では実際に、それぞれのエクササイズ方法を紹介していきます。
体の歪みを改善する「腹筋群のエクササイズ」
では、実際に弱った「左側の内腹斜筋、腹横筋エクササイズ」を見ていきます。
①上向きで右手をあげ、壁に足を乗せる(膝、股関節90°)
②右手を天井に向かってまっすぐ上げ、体を左に捻る
③息を吐ききって3秒止めて、戻す
④腹筋全体と、左の内腹斜筋の収縮感があればOK
体を左に捻りながら、内腹斜筋の意識が難しい場合は
「左脇を骨盤に近づけるイメージ」を持つと良いです。
※左手の位置は自由ですが、お腹の上に置いておくと↑意識しやすいです。
丁寧に「10回1〜2セット」行いましょう。
トレーニング前のウォーミングアップにオススメです。
細かい解説を言葉にすると少し難しいですが、このエクササイズでは
「息を吐きながら体幹部を左回旋」することで、腹筋群(主に、内腹斜筋と腹横筋)が働き、左肋骨の内旋方向へと筋が収縮し、本来なら、左回旋で外旋する左肋骨を抑える動きになります。
「外腹斜筋」を取り入れてない理由は、体幹部の回旋運動は「内腹斜筋、外腹斜筋の共同作用」で行われますが、作用の違いで左回旋時に収縮するのは「左内腹斜筋」「右外腹斜筋」なので、その意味で詳しい解説を割愛しています。
肩、肩甲骨の動きが良くなる「胸椎回旋エクササイズ」
次に、
・肋骨の外旋可動域
・胸椎の伸展、回旋可動域
を上げるためのエクササイズを紹介します。
「胸椎回旋エクササイズ」
①横向きに寝て、下の足は伸ばし、上の足の膝にクッションを入れる(フォームローララーなどおすすめ)
②前並えして、上にある腕を、自分と反対方向に伸ばす
③胸椎(肩甲骨の内側)辺りを中心に、体をゆっくり捻る(腰、骨盤は固定)
④腕が反対側へ周り、体も限界近くまで捻れたら元に戻す
※目線は「腕に少し遅れてついていく」イメージ
フォームローラーについている膝が浮いたり、骨盤の向きが変わらないように注意して、息を吸いながら体を捻ります。
これを10回行うと、次は「肩と肩甲骨」をセットで大きく動かしていきます。
「胸椎+肩、肩甲骨エクササイズ」
①基本の姿勢、動作の意識は同じ
②体を捻りながら、腕をバンザイしていく(親指を自分の顔の方に向ける)
③体を捻りながら、肩甲骨から腕を回すような意識でグルっと半周回す
これも10回で、合計20回を1セット行いましょう。
トレーニング前のウォーミングアップに取り入れ、特に、
・スクワットでバーを担ぐと肩が痛む
・ベンチプレスで肩が痛い
・慢性的な腰痛、肩こりがある
という方に、特にオススメのエクササイズです。
胸郭から見る「体の歪みと左右差」の改善方法 まとめ
以上が、胸郭から見る「体の歪みと改善のエクササイズ」になります。
今回は「立ち方」のパターンから推測して書いていきましたが、
「話が難しくてなかなか理解できない」「自分の胸郭がどうなってるかわからない」という方は、紹介している3つのエクササイズを「左右両方」やってもらうと良いです。
このエクササイズをやって悪影響が出ることは、ほとんど無いですし、胸郭周りの動きが付くことで「腰痛、肩痛の予防や改善」にもなります。
普段のトレーニングで、
・スクワットで、しゃがむと片側に体重が乗る
・デッドリフトのファーストプルで、片側に体重が乗る
という方は、ウォーミングアップとして取り入れてもらい、良い変化が見られれば嬉しいです。
それでは、今日はここまで!次回、お楽しみに!
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